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アングル:欧州各国、マスク氏の政治干渉に懸念 EUとして対応求める声も

2025年01月09日(木)15時56分

米実業家イーロン・マスク氏が欧州政治に介入する発信を繰り返している。2024年11月、ワシントンで代表撮影(2025年 ロイター)

John Irish Lili Bayer

[パリ/ブリュッセル 8日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏が欧州政治に介入する発信を繰り返している。フランスなどからは、欧州連合(EU)が外部の干渉を阻止するため、法律を駆使してマスク氏に厳しく対峙すべきだとの声も挙がっている。

マスク氏はここ数週間、自身のSNSプラットフォーム「X」で欧州諸国の指導者を酷評する投稿を何度も行い、欧州全体に驚愕が広がっている。

マスク氏は世界一の大富豪にしてトランプ次期米大統領の片腕。右派のポピュリスト政党が台頭する欧州各国では、とりわけマスク氏による干渉への懸念が高まっている。

特に、2月のドイツ総選挙を控えてマスク氏が、反移民、反イスラムの政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を支持するコメントを出したことに、欧州各国の指導者は警戒感を募らせた。

フランスのバロ外相は仏ラジオで「欧州委員会が、われわれ独自の空間を守るために存在する法律を断固として適用するべきであり、そうしない場合にはその権限をEU加盟諸国に戻すことを考えるべきだ」と述べ、マスク氏の干渉を防ぐために欧州委員会が法的手段を使うべきだとの考えを示した。

スペインのサンチェス首相は8日、マスク氏の名指しは避けながらも、民主主義を損なっていると非難した。

この問題は、EUがマスク氏と真っ向から対峙してトランプ次期政権を敵に回す覚悟があるかを問う試金石となる。また、EUにおけるSNSプラットフォームの運用を規制するデジタルサービス法(DSA)の有効性も試される。

トランプ次期政権で外部アドバイザーに就くマスク氏が、自らの意思で動いているのか、もしくはトランプ氏の承認を得ているのかは不明だ。外交関係者らは、トランプ氏は気まぐれなため慎重に事を運ぶ必要があるとし、同氏の大統領就任前にこの問題について討議するのは尚早だと述べている。大統領就任は20日。

欧州委員会の報道官は今週、DSAは主要SNSプラットフォームによるリスクに対処する上で有効な道具であることが既に証明されていると指摘。マスク氏の投稿に直接反応して「討論を煽る」ことはしないという政治的選択が採られた、と説明した。

<自由 VS 社会的リスク>

マスク氏はドイツのショルツ首相を「無能なばか」と呼び、クリスマスマーケットに車が突入して死人を出した事件を受けて辞任すべきだと主張した。9日にはXのライブ配信でAfDのワイデル共同代表と対談する。

ショルツ氏は4日、ドイツ紙で「釣りの餌を与えてはいけない」と述べ、挑発に乗らない姿勢を示した。

フランスのマクロン大統領は今週「世界最大級のSNSのオーナーが(中略)ドイツを含む選挙に直接介入するなど、10年前にだれが信じただろうか」と語り、マスク氏に矛先を向けた。

マスク氏は英国のスターマー首相(労働党)とその政権についても一貫して批判的だ。

EU高官らは、欧州政治に関するマスク氏のコメントは問題だとしながらも、DSAは十分に強力な道具だと主張している。

欧州委員会は1年前から、XがDSAを順守しているかどうかを調査している。マクグラー欧州委員(民主主義、法務、法の支配、消費者保護担当)はロイターに、言論の自由と、憎悪の喚起もしくは選挙干渉に関するリスクとのバランスをどう採るかについて説明する責任はXなどのプラットフォームにあると説明。DSA執行チームはドイツやアイルランドの規制当局とも緊密に協力していると付け加えた。

EU加盟27カ国の調整官で構成するDSA理事会は次回、1月24日に会合を予定しており、マスク氏への対応を検討する機会となりそうだ。

ロイター
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