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衆院選結果に市場は株買い円売り、最悪のシナリオは回避との声も

2024年10月28日(月)11時23分

 10月28日の東京市場は日経平均が寄り付きこそ下落して始まったものの、まもなくプラス転換し、衆議院選挙の結果に買いで反応している。都内の東京証券取引所で2015年7月撮影(2024年 ロイター/Yuya Shino)

Noriyuki Hirata

[東京 28日 ロイター] - 28日の東京市場は、衆議院選挙の結果に株は買い、円は売りで反応した。過半数を失った与党の自公が財政出動を拡大するとの思惑が日経平均を、日銀の追加利上げが難しくなったとの見方が円安につながっているとの声が市場関係者からは聞かれた。自公が比較第一党の座を失う最悪のシナリオは回避したとの見方もあった。

衆院選での与党の議席減は想定以上だったとして朝方には株安を予想する声も多く聞かれ、日経平均は売りが先行した。ところが短時間で切り返してプラスに転じ、一時700円超高に上値を伸ばした。

「2つの点で最悪のシナリオが回避されたことが大きい」と、東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは指摘する。

1つは衆院選での自民党の議席の減少度合いだ。市場の想定を超える議席の減少だったものの、自民が比較第一党から降りるといったより厳しいシナリオが回避され、閣外協力するために財政出動を膨らませたり、減税する必要があるとの思惑から景気は良くなるとの読みが優勢になったとの見立てだ。

閣外協力の動きが本格化するのはこれからで不透明感も付きまとうが、平川氏は「国民民主などが立憲民主を支持するとは想定しにくく、首班指名は石破茂首相になるだろう」と話す。自公が国民民主と連携することになれば、その意向をくまざるを得ないとみる。

もう1つは、中東情勢を巡る最悪シナリオの回避だ。週末にはイスラエルによるイランへの報復攻撃があったが、石油施設でなく軍事施設にとどまった。時間外取引の米株先物はプラスとなっており、こちらも日本株の支援材料になっている。

為替が週末を挟んで一段の円安に振れたことも、輸出関連株を中心に株価の支援材料になっているとみられる。輸出株の代表格となるトヨタ自動車は3%超高に上昇している。

ドル/円は朝方に153円台に上昇し、その後153円後半に上値を伸ばしている。みずほ証券の⼭本雅⽂チーフ為替ストラテジストは、総選挙を経て「政策決定の遅延や困難さが想定され、日銀利上げの遅延リスクが高まっている」ことが要因とみている。

岩井コスモ証券の林卓郎投資情報センター長は、事前に与党の苦戦が織り込まれた反動が出ているほか「与党の議席減は事前観測より多かったものの、今後の他党との連携はは少数与党でいくか、連立を組むかの違いであって、政策はさほど変わらないだろう」との見方を示す。市場の目線はすでに、為替や海外の動向、企業業績に向かっているとみる。

野村証券投資情報部の沢田麻希ストラテジストは「選挙結果がどうなるかへの不透明感が払しょくされた」と指摘する。イベント通過によって、次のシナリオが立てやすくなったという。 1

市場の一部では「(選挙結果を受けて)石破首相の交代論につながり、財政刺激・金融緩和を主張する高市早苗氏が次期首相の候補との思惑による株買いも入っていそうだ」(国内証券のアナリスト)との声もある。

ただ、首相に批判的とみられる多くの議員が落選したことなどから、少なくとも予算成立までは石破首相の交代論は出にくいと野村の沢田氏はみている。年末にかけては、APEC(アジア太平洋経済協力)やG20といった国際会議などの重要イベントや、25年度の税制改正、予算編成が控えている。

首相の後退がなければ選挙期間中に言及した13兆円を上回る補正予算を巡る議論が進み、日本株の支えになるとみられる一方、「連立の枠組みをめぐる動向には不透明感があり、市場が一喜一憂する展開には注意が必要」と、野村の沢田氏は話している。

ロイター
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