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2024年10月現在、米国大統領選挙が熱を帯びている。民主党の候補者はカマラ・ハリスに交代したが、ジョー・バイデン現米大統領は就任直後から一貫して「民主主義対権威主義」の構図を描いてきた。
この背景には、国際関係における中国をはじめとする権威主義の台頭のみならず、ドナルド・トランプ支持派を中心に巻き起こった米国内での民主主義の後退が影響していると思われる。
現代国際政治では、しばしば権威主義に「デジタル」という枕詞がつけられる。「一帯一路」構想を掲げる中国が輸出するデジタル技術を駆使した人々への監視や管理に魅せられた政治指導者が、その統治手法に共鳴し、模倣した結果、世界に権威主義が広がっている可能性があるからだ。
現代では、権威主義国家で暮らす人の数は7割を超え、民主主義のスコアも年々悪化している。
さらに、権威主義国家は、民主主義国家の開放性を利用して選挙に介入するなどして、民主主義の価値を貶めようとしているとされる。土屋大洋・川口貴久(共編)『ハックされる民主主義──デジタル社会の選挙干渉リスク』(千倉書房、2022年)では、民主主義がはらむ脆弱性と危険性が描かれている。
以上を踏まえると、昨今の国際社会では、デジタル技術を駆使して強権的に内政を安定させる権威主義国家が、民主主義国家に対して攻勢を仕掛けているという状況が浮かび上がってくる。
デジタル技術革新が進む現代では、民主主義が縮小し、権威主義が跋扈する世界しか想定されないようにさえ思われる。
しかし、元来、デジタル技術には人々の討議を促し、多様な意見を政治に反映し、政治行政の透明性を高めることが期待されていた。2010年頃に発生した「アラブの春」においても、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が重要な役割を果たしたことから、デジタル技術革新は民主主義の明るい未来を映し出すかと思われた。
だが、こうした楽観的な予測は、ソーシャルメディアが社会の分断を深めたり、陰謀論やフェイクニュースの拡散を促進したりする傾向があることが発覚してから鳴りを潜めることとなった。
一方で、強権的な政治指導者は、デジタル技術を駆使して、反対者を抑圧し、プロパガンダなどを流布して自らの権力を強化した。
民主主義国家が軒並み国内の分断に直面し、様々な社会課題を解決できないなか、デジタル技術を活用してそれを乗り切った(かのように見える)独裁者は自信を深め、世界にその統治手法の正統性を発信しているのである。
vol.101
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