ニュース速報
ビジネス

ホンダ、薄型電池パックにインバーター小型化 新型EVにAI活用

2024年10月09日(水)10時06分

 10月9日、ホンダはこのほど米テスラや中国BYDに対抗するため開発を進める新型の電気自動車(EV)商品群の具体的な技術を公開した。写真はニューデリーで2023年6月撮影(2024年 ロイター/Anushree Fadnavis)

Maki Shiraki

[栃木県芳賀町 9日 ロイター] - ホンダはこのほど米テスラや中国BYDに対抗するため開発を進める新型の電気自動車(EV)商品群の具体的な技術を公開した。電池パックを薄くし、インバーターを小型化、動力装置のエネルギー効率を高めるなどした。三部敏宏社長は栃木県の研究所で開いた取材会で、生産技術でコストを抑え、人工知能(AI)技術などを活用し、「世界で勝てる価値」を作ると語った。

ホンダが26年から世界へ投入するEV商品群「0(ゼロ)シリーズ」は、同社が世界に先駆け日本で市販化した「レベル3」の自動運転技術を搭載。現在は高速道路で渋滞中に時速50キロ以下で走行する場合など一定の条件下でのみ運転者が前方から視線を外すことが可能だが、今後は徐々に使用できる場面や車速の範囲を広げ、一般道での走行も目指す。無線通信でEVの基本ソフトを更新して機能を追加。AIやセンサーなども駆使し、ユーザーが最新で高精度な技術を使えるようにする。

電力を制御するインバーターを含む動力装置(イーアクスル)も開発し、エネルギー損失を競合比17%以上低減。インバーターは一般的なEV比で約4割小型にして横置きを可能とし、全高を下げ車内空間を広げた。

電池パックは同約6%薄型化。接合技術で冷却水路を細くしたほか、電池ケースは6000トンの圧力で大型部品を一体成型する「メガキャスト」技術の設備で製造し、60超ある部品を5点に削減した。同設備は米オハイオ州の工場に6機導入。中国勢やテスラ同様、28年以降にボディ骨格部品にもメガキャストを採用し、同年稼働するカナダのEV工場に導入する。

三部社長は「BYDなどの中国勢やテスラと対抗するには今までの既存の価値観の延長戦上で戦っても勝てない」と述べた。ゼロの立ち上げに日産自動車との「協業の話が入ることはない」としたが、28年以降は一部入る可能性も示した。

調査会社カウンターポイントによると、EV市場はテスラがシェア約2割でトップ、BYDが15%程度で2位につける。日本勢はハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を含めた電動車全体では強いが、電気で100%走るEVとなると存在感は薄い。

三部社長は足元で成長が鈍化しているEV市場について「想定通り」とし、今後も「基本戦略を維持しながら変化への対応は十分可能だ」と話した。

ゼロは26年の北米を皮切りに30年までに小中大型7モデルを世界展開する計画で、航続距離約480キロ以上、15─80%の急速充電は10─15分へ時間短縮を図る。車体は従来比約100キロ軽量化し、電力消費量の効率化と衝突安全性を両立。EV専用工場で製造することで混流生産に比べ35%の生産コスト削減を狙う。

(白木真紀 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ブラジル中銀総裁、ガリポロ氏が1月就任へ、議会上院

ワールド

米FAA、ボーイング737巡り安全警告 方向舵に不

ワールド

豪中銀、ターム資金調達ファシリティー再開は極端な状

ワールド

バイデン氏、9日にイスラエル首相と電話協議へ イラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 2
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設を奪還か、当局が作戦映像を公開
  • 3
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決闘」方法に「現実はこう」「想像と違う」の声
  • 4
    「ロシアの無人機攻撃」...ウクライナとルーマニアの…
  • 5
    ハマス奇襲から1年。「イランの核をまず叩け」と煽…
  • 6
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 7
    神田伯山が語る25年大河ドラマ主人公・蔦屋重三郎「…
  • 8
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 9
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 10
    ウクライナ、ロシア国境奥深くの石油施設に猛攻 ア…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 4
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 7
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 8
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 9
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 10
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 8
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 9
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中