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焦点:利回りに気をもむドル弱気派、米国の底堅い経済で見通し複雑に

2024年10月03日(木)15時11分

 世界の各中央銀行による利下げが為替市場を揺るがす中、ドル安の行方を見極めようとするトレーダーは底堅い米国経済や米大統領選挙に注目している。写真は米ドル紙幣。2018年2月撮影のイメージ写真(2024年 ロイター/Jose Luis Gonzalez/Illustration)

Saqib Iqbal Ahmed

[ニューヨーク 3日 ロイター] - 世界の各中央銀行による利下げが為替市場を揺るがす中、ドル安の行方を見極めようとするトレーダーは底堅い米国経済や米大統領選挙に注目している。

第3・四半期のドル指数は4.8%下落し、四半期ベースで約2年ぶりの大きなマイナスとなった。先月の大幅な米利下げで下押し圧力が強まった。

ドルが今後どれだけ下落し、どの通貨が恩恵を受けるかは主に利回りの問題だろう。米国の利回りは長年、ほとんどの先進国を上回っており、ドルの魅力を高めていた。

その状況は今や変わりつつあり、米連邦準備理事会(FRB)などの中銀は経済成長を支えるために金利を引き下げている。ドル安に賭ける多くのトレーダーは、ドルとの利回り格差が縮小すると予想される通貨を対象としている。

米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、先物市場でドル売り越し額は141億ドルに上り、約1年ぶりの高水準となった。しかし、ドル安の道筋は一本調子ではなさそうだ。

依然として堅調な米国経済はFRBの利下げ幅を制限する可能性があり、ドルのさらなる下落見通しを複雑にしている。一方、米大統領選は今後数週間、為替市場にボラティリティーをもたらす恐れがある。

ブランディワイン・グローバルのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「必ずしも『ドルを売って全てを買う』というわけではない。もう少し厳選する必要がある」と語る。  

ドル指数は年初来で横ばいとなっているが、4月の高値からは約5%下落している。FRBに対する金融緩和期待から米利回りが低下したためだ。

経済データは今後数日間の大きな動きのきっかけとなるかもしれない。

ユーロ圏のインフレ率は9月に2021年半ば以来初めて2%を下回り、欧州中央銀行(ECB)による今月の利下げが見込まれ、ユーロ安要因となっている。

4日発表の米雇用統計は年内にFRBがどの程度金利を引き下げるかについて材料を提供しそうだ。

強い数字が出れば緩やかな金融緩和観測が強まる可能性がある。一方で、キャピタル・ファンド・マネジメントのマクロ戦略担当責任者クリスチャン・デリー氏は「米国経済が軟調な局面に入った場合、市場はさらなる利下げを織り込み、ドル安につながるだろう」と述べた。

アムンディUSの債券・為替戦略担当ディレクター、パレシュ・ウパディアヤ氏は「金融政策の相違によって引き起こされる金利差拡大のような特異なストーリー」に注目。同氏のドル安シナリオ投資にはノルウェークローネと豪ドルのポジションが含まれる。

ノルウェー中銀は最近、政策金利を16年ぶりの高水準に据え置き、利下げは25年初めまで待たなければならない可能性を示唆。豪中銀は先週、金利を据え置き、近いうちに利下げが行われる可能性は低いとした。

ウパディアヤ氏はブラジルレアルのポジションも増やした。ブラジル中銀は他の多くの中銀と異なり、厳しいインフレ見通しに対処するため先月に利上げを実施した。レアルは今年、対米ドルで約10%下落している。

投資家によると、円も金融政策の相違によってさらに支援される可能性がある。日本銀行は7月に政策金利を0.25%に引き上げた。さらなる利上げについては急がない姿勢を示しているが、日米金利差の縮小により、円はドルに対して今年の安値からすでに13%上昇している。CFTCのデータによると、ドルに対する円買い越し額は58億ドルに上る。

BofAグローバル・リサーチが先月発表した、購買力平価や実質実効為替レートなどの指標に基づく通貨評価分析によると、円とノルウェークローネは先進国通貨の中で最も過小評価されている通貨に含まれている。最も過大評価されている2通貨はドルとスイスフランだ。

とはいえ、どのようなポジションを取るにせよ、投資家は11月5日の米大統領選を巡る潜在的な変動にも対処しなければならない。

これから数週間の不確実性は人気の避難先であるドルを押し上げる可能性がある。また、多くの投資家は共和党候補トランプ氏の勝利もドル高につながると考えている。

ブランディワインのマッキンタイア氏は「現在の不確定要素は米国の選挙だ」と指摘。ドルに対して弱気な姿勢を維持しているが、最近のドル安で以前ほどではなくなっている。「確信を持つのは難しい」とこぼした。

ロイター
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