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アングル:JPモルガン、迫るCEO退任 「ジェイミー・プレミアム」消滅か

2024年10月03日(木)15時02分

 9月30日、市場では米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO・写真)の後継者や交代時期を巡る疑問がくすぶっているが、市場関係者の間でほぼ確実視されていることが1つある。ダイモン氏が退任すれば同社の株価が下落するということだ。写真は4月、ニューヨークで撮影(2024年 ロイター/Mike Segar)

Nupur Anand

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 市場では米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)の後継者や交代時期を巡る疑問がくすぶっているが、市場関係者の間でほぼ確実視されていることが1つある。ダイモン氏が退任すれば同社の株価が下落するということだ。

ダイモン氏の在任期間はウォール街の大手行で最長。投資家4人とアナリスト3人の推計によると、JPモルガンの株価には10─15%の「ジェイミー・プレミアム」が上乗せされており、退任すればその分が消失するリスクがある。

15%のプレミアムは先週末終値時点で時価総額900億ドル近くに達する。

グリーンウッド・キャピタル・アソシエーツのウォルター・トッド最高投資責任者(CIO)は「プレミアムは、どのような形で後継者の継承が行われるかにも左右される。予想外の事態が発生すれば、プレミアムは10%台以上になる可能性がある。よく考え抜かれた段階的な継承であれば、プレミアムは下がるかもしれない」と述べた。

市場関係者によると「ジェイミー・プレミアム」はここ数年で上昇している。安定した業績と規制上大きな問題がないことが背景だ。プレミアムは他行のCEOよりも高いとみられている。

ダイモン氏は今年、退任までの時間は残り5年を切り、早ければ2年半後になる可能性があると表明。9月の投資家向け会合では、後継計画が最重要課題であり「正しい方向に持っていきたい」と語った。

同氏は68歳。JPモルガンのCEOを18年間務めており、米国の財界で最も影響力のある人物の1人だ。過去最高益の計上、市場シェア拡大、一貫してライバルを上回るパフォーマンスを実現した立役者とみなされている。

JPモルガンはダイモン氏の指揮の下、2008年の世界的な金融危機のさなか、国内最大の貯蓄金融機関(S&L)だったワシントン・ミューチュアルを買収。総資産ベースで全米最大の銀行となった。

国内最大手6行の現役CEOのうち、同年の金融危機で陣頭指揮を執った経験があるのはダイモン氏のみだ。

昨年、米地銀が相次いで破綻した際にはファースト・リパブリック銀行を買収し、さらに事業を拡大した。

11月5日の大統領選が迫る中、財務長官など経済を担当する政府の要職に起用されるとの見方も浮上している。

<多彩な後継候補>

ダイモン氏は、自身の退任後にJPモルガンを率いる準備ができている「極めて」優秀な人材がそろっていると述べている。

取締役会が後継候補に挙げているのは、商業・投資銀行部門の共同CEOであるジェニファー・ピープザック、トロイ・ローボーの両氏、消費者・コミュニティー銀行部門CEOのマリアン・レーク氏、資産運用・ウェルスマネジメント部門CEOのメアリー・アードス氏。

また、ダイモン氏はダニエル・ピント社長について「あすにも銀行経営を担える」と指摘している。

HSBCのアナリスト、ソウル・マルティネス氏は「市場では、レーク氏とピープザック氏が最有力候補としてたびたび取りざたされており、2人とも投資業界では非常に高い評価を受けている」と述べた。2人とも女性で、同行の最高財務責任者(CFO)を務めた経歴がある。

ガベリ・ファンズのポートフォリオマネジャー、マクレー・サイクス氏は「JPモルガンは人材の層が厚く、CEO候補は全員、非常に有能だ」とした上で「取締役会が外部の人間の起用を検討する可能性もある」と述べた。

いずれにしても、ダイモン氏退任の影響は大きいとみられる。

ガベリ・ファンズのサイクス氏は、会社の成否を1人の重要人物が握った例として、アップルのスティーブ・ジョブズ共同創業者を挙げ、同氏が亡くなるとアップル株が下落したことに触れた。ただ「その後は新経営陣の下で、動揺が収束するなかで株価は上昇基調となった」とも語った。

ロイター
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