ニュース速報
ビジネス

米財政、次期政権下で一段と悪化 政治二極化で交渉困難=ムーディーズ

2024年09月25日(水)01時56分

格付け会社ムーディーズは米国の財政について、誰が次期政権に就こうと、政治的な二極化を背景に債務負担の軽減に必要な措置の交渉が困難になるため、状況は一段と悪化するとの見方を示した。5月撮影(2024年 ロイター/Kaylee Greenlee Beal)

Davide Barbuscia

[ニューヨーク 24日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズは米国の財政について、誰が次期政権に就こうと、政治的な二極化を背景に債務負担の軽減に必要な措置の交渉が困難になるため、状況は一段と悪化するとの見方を示した。

ムーディーズは24日に公表した報告書で、11月5日の大統領選挙で民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領のどちらが当選しても、米国の財政状況は弱体化する可能性が高いと指摘。

「債務返済能力の低下により財政力が徐々に弱まるため、次期政権は財政見通しの悪化に直面する」とし、「こうした傾向を抑制し、財政赤字の抑制に役立つ政策措置がなければ、米国の信用に対し、財政力の悪化が一段と大きな重しになる」とした。

米国の財政赤字は、向こう5年間は毎年、国内総生産(GDP)の7%に相当する水準になると予想。2034年までに9%に拡大する可能性があるとし、実際にそうなれば、債務の対GDP比率は34年までに130%と、23年の97%から上昇すると試算した。

その上で「財政赤字を削減し、その赤字を補うための新たな借り入れを抑制し、利払いの増加を鈍化させるための有意な政策措置がなければ、米国の財政力は大幅に弱まる」と指摘。「軌道修正のための政策措置が取られなければ、こうした債務動向は一段と持続不可能となり、(最高位の)『Aaa』格付けに矛盾する」と警告した。

ムーディーズはまた、米国の財政見通しにとって決定的な要因となるのは大統領選の結果だけでなく、11月の選挙で決まる連邦議会の構成も影響すると指摘。「分裂した状態が続き、次期政権による抜本的な財政改革は阻止されると予想している」とした。

トランプ氏は先月、米国の大統領は連邦準備理事会(FRB)の決定に発言権を持つべきとの考えを表明。ムーディーズはこれについて、金融政策決定に対する政治的影響は信用に対するマイナス要因になると指摘。米金融市場に対する投資家の信頼に影響が及ぶ可能性があるとした。

主要な格付け3社で米国債に最高位の格付けを維持しているのはムーディーズのみ。ただ、ムーディーズは23年11月、米財政赤字の高止まりと債務支払い能力の低下を理由に、米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げている。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏、アルゼンチンへの投資検討 世界第4位のリ

ワールド

トルコ大統領、国連でイスラエルを糾弾 「西側価値観

ビジネス

米CB消費者信頼感9月は98.7、約3年ぶり大幅低

ワールド

バイデン氏「外交的解決は可能」、中東の緊張緩和呼び
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
2024年10月 1日号(9/24発売)

被災地支援を続ける羽生結弦が語った、3.11の記憶と震災を生きる意味

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感...世界が魅了された5つの瞬間
  • 2
    先住民が遺した壁画に「当時の人類が見たはずがない生物」が描かれていた「謎」...南ア大学チーム
  • 3
    中国「愛国ビジネス」暴走、日本人襲撃...中国政府は止められないのか
  • 4
    メーガン妃に大打撃、「因縁の一件」とは?...キャサ…
  • 5
    ゼレンスキー氏「戦争終結に近づいている」、米テレ…
  • 6
    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…
  • 7
    がん治療3本柱の一角「放射線治療」に大革命...がん…
  • 8
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 9
    「ゾッとした」「未確認生物?」山の中で撮影された…
  • 10
    恩師を殺害したバスジャック犯の少年に、5年後「つら…
  • 1
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感...世界が魅了された5つの瞬間
  • 2
    がん治療3本柱の一角「放射線治療」に大革命...がんだけを狙い撃つ、最先端「低侵襲治療」とは?
  • 3
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 4
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 5
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 6
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 7
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…
  • 10
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 9
    「ローカリズムをグローバルにという点で、Number_i…
  • 10
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中