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アングル:FRBの量的引き締めに不透明感、大幅利下げとの整合性が課題

2024年09月18日(水)07時21分

 9月17日、 今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利下げ観測が浮上していることを受けて、量的引き締め(QT)も早期に終了となるのではないかとの見方が出ている。写真はワシントンのFRB本部。2017年5月撮影(2024年 ロイター/Kevin Lamarque)

Michael S. Derby

[ニューヨーク 17日 ロイター] - 今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利下げ観測が浮上していることを受けて、量的引き締め(QT)も早期に終了となるのではないかとの見方が出ている。

QTについては、流動性管理ツールであり、物価・景気に配慮する金利政策とは異なるとの認識が一般的だが、FRBが景気悪化を懸念して急ピッチで利下げを進める場合、流動性の引き締めとの整合性が取れなくなると受け止められる可能性がある。

QTを近く終了することになれば、FRBのバランスシートの見通しが大きく変わる。ニューヨーク連邦銀行が7月に大手銀行を対象に実施した調査ではQTの終了は来年4月と予想されていた。

ニューヨーク連銀で金融政策の実務を担当していたグッゲンハイム・インベストメンツのパトリシア・ゾベル市場戦略・マクロ調査担当代表は「もし50ベーシスポイント(bp)の利下げを実施するのであれば、バランスシートに関する決定がより複雑になる」と指摘。景気悪化を懸念して大幅な利下げを実施する場合、QTが早期終了となる「可能性は確かにある」との見方を示した。

ただ、同氏は利下げ幅が25bpとなり、現在のペースでQTが続くと予想している。

ドイツ銀行のエコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏は、今週のFOMCで大幅利下げが決まり、ドットチャートで今後の積極的な金融緩和が示された場合、「利下げとバランスシート圧縮継続の間に矛盾が生じることになり、そのような状況下で政策ツールについて曖昧なメッセージを送りたくないと(FRBが)考えるかもしれない」と述べた。

バンク・オブ・アメリカのアナリストは、景気下支えを目的に50bpの利下げが実施された場合、QTは比較的早期に終了となるとの見方を示した。

<流動性は依然潤沢>

FRBは2022年夏にQTを開始。これまでのところバランスシートを約1兆8000億ドル圧縮した。今年5月には圧縮ペースの目標を月950億ドルから現在の上限である600億ドルに減速させた。

FRBは短期金利の正常なボラティリティーとフェデラルファンド(FF)金利の確実なコントロールを実現するため、金融システム内の流動性を十分な水準に保ちたいと考えており、QT終了を巡っては、流動性の適正水準はどこかなのかが主に議論されている。

ダドリー前ニューヨーク連銀総裁は「準備金がありまるほど存在す る段階から潤沢に存在する段階への移行が終了したとFRBが認識するまで(QTの)調整は行われない」と指摘。「(FRBは)いつどの時点で移行が終了するか正確なところは把握していないが、まだそこまでたどり着いていないことにはかなりの自信を持っている」と述べた。

同氏によると、市場はすでにQTを長期借り入れコストに「組み込んで」いるため、市場を動かす要因としての存在感は薄れている。

一方、ブラード前セントルイス地区連銀総裁は、少なくとも当面の間はQTと金利政策の整合性が取れており、たとえ利下げが実施されても整合性は維持されるとの見方を示す。「政策金利をある程度引き下げたとしても、中立金利の推定値を上回るため、政策金利を通じて引き続き制約的な金融政策を運営することになり、政策の量的な引き締め部分を補完する形になる」と述べた。

同氏は、FF金利が中立金利付近に達すれば、QT終了を検討する時期だと指摘した。調査会社LHマイヤーのアナリストは、FF金利を3%以下に引き下げる場合は、それがQT終了の引き金になると分析している。

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