米カーライル傘下のリガク、10月に東証上場 時価総額3000億円規模=関係者
9月19日、米投資ファンドのカーライル・グループ傘下で、半導体の製造工程にも使われるX線分析機器大手のリガク(東京・昭島市)が、10月をめどに新規上場(IPO)の準備を進めていることが分かった。複数の関係者が明らかにした。写真は都内で2018年10月撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)
Miho Uranaka Kane Wu Sam Nussey
[東京 19日 ロイター] - 米投資ファンドのカーライル・グループ傘下で、半導体の製造工程にも使われるX線分析機器大手のリガク(東京・昭島市)が、10月をめどに新規上場(IPO)の準備を進めていることが分かった。複数の関係者が明らかにした。 関係者の2人によると、上場時の時価総額は3000億円規模を目指している。カーライルは保有株式の一部を売り出す方針だ。 年初から順調に上昇してきた日本の株式市場は、日銀の追加利上げを受けた円高と米景気後退懸念で8月に入って急落。足元は米経済のソフトランディング(軟着陸)期待の高まりなどで回復基調にあるが、今後の相場環境次第で、中止や上場時期を見直す可能性もある。 同関係者らによると、IPOの工程全体を取り仕切る主幹事証券は野村証券、モルガン・スタンレーMUFG証券、BofA証券が共同で務める。 リガク、カーライル、野村証券、モルガン・スタンレーMUFG証券、BofA証券はロイターの取材に「コメントを控える」とした。 カーライルは2021年1月、当時のリガク社長だった志村晶氏と共同で全株取得することを決定。出資比率はカーライルが約80%、志村氏が約20%で、数年以内に上場を目指すとしていた。当時の報道によると、カーライルはこのとき約1000億円を投じたとみられている。 半導体の研究開発や製造工程が複雑化する中、X線などを使って対象物を破壊せず検査・分析できる装置の需要は高まっており、1951年に設立されたリガクの23年売上高は前年比25%増の800億円。うち7割を海外が占める。 リガクは医療、素材、製薬などの分野にも装置を供給。日本のX線分析装置最大手として、英スペクトリス傘下のマルバーン・パナリティカルや米ブルカーなどと世界で競合している。 半世紀にわたってリガクを率いた創業家出身の志村氏は、21年6月に社長を退任。GEヘルスケアやアルテリア・ネットワークスで最高経営責任者(CEO)を歴任し、カーライル・ジャパンのシニア・アドバイザーを務めた川上潤氏が昨年2月に社長に就任した。 カーライルは「ケンタッキーフライドチキン」を運営する日本KFCホールディングスやオリオンビールなど、日本企業への投資を拡大している。同社は5月、過去最大の日本向け投資ファンドとして4300億円を調達したと発表した。
<大型IPO相次ぐも銘柄選別>
今年のIPO件数は9月末時点までで54社と、昨年の66社を下回っているが、10月はリガクを含めて大型上場が相次ぐ。関係者4人によると、10月下旬の上場を計画する東京メトロは9月20日に東京証券取引所から承認が下りる見込み。半導体大手のキオクシアも来週承認、10月末の上場を目指している。
それでも年間件数は昨年の96社に届きそうにないとの見方が市場関係者の間では出ている。上場前に企業規模を拡大しようと、IPOよりM&A(合併・買収)を優先する企業が増加していることが背景にある。日本の株式市場が完全には回復していないとみられていることも要因で、上場企業の中には割安に放置されている銘柄が存在し、IPO株への投資意欲も強くはないという。
SMBC日興証券で企業のIPOなどを支援する第一プライベート・コーポレート・アドバイザリー部の斉藤宗一郎部長は、「(投資家による)銘柄選別は依然として厳しい状況が続いている。ただ、きちんとリサーチして高い成長が期待できる会社については、海外機関投資家含めて、しっかりと需要も集まっているので、すごく悲観する状況ではない」と話す。
(浦中美穂、Sam Nussey, Kane Wu 編集:久保信博)