インタビュー:USスチール買収、安保上の危惧との主張に違和感=自民党・石破氏
9月6日、 自民党総裁選に立候補する石破茂・元幹事長(写真)は、ロイターのインタビューに応じ、米バイデン政権が日本製鉄のUSスチール買収を阻止する可能性が強まっていることについて、「安全保障上の危惧があると米国が言っていることにはすごく違和感がある」と語った。都内で同日撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Nobuhiro Kubo Tim Kelly
[東京 6日 ロイター] - 自民党総裁選に立候補する石破茂・元幹事長は6日、ロイターのインタビューに応じ、米バイデン政権が日本製鉄のUSスチール買収を阻止する可能性が高まってことについて、「安全保障上の危惧があると米国が言っていることにはすごく違和感がある」と語った。
石破氏は「同盟国に対してもディール(駆け引き)を仕掛けるというのは最近の米国の特色だと思っている」と指摘。「NATO(北大西洋条約機構)諸国に対しても、今回の日本に対してもそうだ」と述べた。
外国企業による国内企業の買収を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)は8月末に日鉄とUSスチールに書簡を送付。日鉄をUSスチールが買収すれば、供給過剰状態にある中国製鋼材に対する輸入関税引き上げを求めなくなり、米国内の鉄鋼生産に影響を及ぼす可能性に懸念を示した。
米側の懸念について、専門家などからは説得力に欠けるとの声が出ている。日鉄の買収審査に関与していないCFIUSの弁護士マイケル・ライター氏は「委員会が指摘した問題は、ほぼどのように見ても国家安全保障の範疇(はんちゅう)に入るようなものではない。明らかに他の2つの範疇に入るものだ。国粋主義的な貿易保護主義と選挙政治だ」と話す。
石破氏は「同盟の信頼性を損なうようなことを言うのは本当に正しいことだろうか」とし、自身が首相になったら、米国のやり方が公正かどうか「日本政府として誠心誠意かつ論理的に話をする」と述べた。
<日銀の追加利上げ>
石破氏は日本の金融政策にも言及し、年内の観測もある日銀の追加利上げについて、「今利上げができる環境が十分に整っているかどうか、日銀の判断であることは百も万も承知の上で言えば、それが十分かどうかは議論のあるところだ」と語った。国内総生産(GDP)の5割以上を占める個人消費が、物価高の影響などで弱いことに懸念を示した。
このほか石破氏はエネルギー政策について、地熱や小規模な水力発電などを最大限活用することに意欲をみせた。「AI(人工知能)社会は電力を大量に消費するというが、省エネ型のAI社会も目指し、政策を組み合わせた結果として原発の比重は下がっていく」と語った。
石破氏は「原発をいらないとは一度も言っていない。どちらかというと推進側で、そのスタンスは変わっていないが、安全を最優先に考えるべき」とした。「東日本大震災でわれわれは原発を持っていることの脆弱(ぜいじゃく)性を痛感したはずだ」と述べた。
(久保信博、Tim Kelly 編集:青山敦子)