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アングル:米国株、利下げ観測で強気相場継続も 決算や大統領選が波乱要因

2024年07月10日(水)18時34分

 7月10日、米株式市場では、利下げが近いとの観測が強気相場を下支えする可能性があるが、企業の決算発表や大統領選を巡る不透明感が波乱要因になり得るとの見方が出ている。写真は2013年7月、米ワシントンで撮影(2024年 ロイター/Jonathan Ernst)

Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米株式市場では、利下げが近いとの観測が強気相場を下支えする可能性があるが、企業の決算発表や大統領選を巡る不透明感が波乱要因になり得るとの見方が出ている。

連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は9日の議会証言で、米経済は「もはや過熱した状態ではない」と発言。利下げの根拠が増しているとの考えを示唆した。

BMOウェルス・マネジメントのユンユー・マ最高投資責任者は今後1年で約6回の利下げがあると予想。「市場にとっても経済にとっても、これは間違いなくプラス要因だ」と語った。

CMEフェドウオッチによると、市場は9日遅くの段階で9月の利下げ確率を70%以上と予想。1カ月前は約50%だった。LSEGのデータによると、先物市場は今年の利下げ幅を約50ベーシスポイント(bp)と見込んでいる。

スパルタン・キャピタル・セキュリティーズのチーフエコノミスト、ピーター・カーディロ氏は「利下げが近づいている。私は9月と12月の利下げを予想している」と述べた。

<今後の波乱要因>

パウエル議長は議会証言で、インフレがここ数カ月で改善しており、「一段と良好なデータが得られれば」金融緩和の根拠が強まるとの認識を示した。

最初の関門は11日発表の6月の消費者物価指数(CPI)だ。CPIはここ数カ月、鈍化傾向が見られるが、予想より強い内容になれば、利下げ観測が後退する可能性がある。

12日からは大手銀行を皮切りに決算発表が本格化する。市場の高い期待に応えられなければ、高値圏にある株式市場を圧迫する恐れがある。LSEG・IBESによると、S&P総合500種指数の採用企業は今年10.6%、来年14.5%の増益が予想されている。

また、先月下旬に行われた大統領選のテレビ討論会でバイデン大統領が精彩を欠いたことを受けて、バイデン氏の撤退を求める声が出ており、大統領選の先行き不透明感も強まっている。

トゥルーイスト・アドバイザリー・サービスのキース・ラーナー共同最高投資責任者は、米国株の見通しは依然明るいが、上半期が好調だったため、今後は相対的に値動きが荒くなると予想。

同社によると、利下げ開始後の6─12カ月間は、景気後退を回避できれば株価が上昇する傾向がある。

金利が低下すれば、株高の裾野が拡大する可能性もある。

ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、マット・ミスキン氏は、金利が低下すれば、資金調達への依存度が高い小型株が値上がりするのではないかと指摘。小型株で構成するラッセル2000指数は年初から0.1%しか上昇していない。

ただ、利下げは必ずしも株価の上昇につながるわけではない。景気悪化で急ピッチな利下げを迫られるケースも多い。

ウェルズ・ファーゴ投資研究所によると、S&P総合500種指数は利下げ開始後の250日間で平均20%下落している。

同研究所によると、FRBがインフレ率の低下を受けて利下げに踏み切った場合は、その後6─18カ月間、株価が好調に推移する可能性が高いが、「マクロ経済の混乱や市場の混乱への対応で積極的な利下げを余儀なくされた場合、株価のパフォーマンス悪化が予想される」という。

ロイター
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