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大企業・製造業2期ぶり改善、物価見通しは引き上げ=6月日銀短観

2024年07月01日(月)10時58分

 日銀が7月1日発表した6月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス13と、2期ぶりに改善した。都内で2020年5月撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Kentaro Sugiyama Takahiko Wada

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した6月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス13と2期ぶりに改善し、2022年3月以来の高水準となった。素材産業を中心に価格転嫁が進んだ。一方、大企業・非製造業のDIはプラス33と小幅ながら16期ぶりの悪化。値上げで購入点数が減少したとして「小売」は大きく悪化した。

企業の物価や販売価格の見通しは3年後、5年後で上方修正された。賃金と物価の好循環が持続しているとの見方から、市場では「日銀の早期利上げ観測は後退しそうにない」との指摘が出ている。

<「小売」が大幅に悪化、値上げで購入点数が減少>

大企業・製造業の業況判断DIは、ロイターがまとめた予測中央値(プラス12)を小幅に上回った。「紙・パルプ」、「窯業・土石製品」など素材産業は価格転嫁が進展。「はん用機械」、「業務用機械」からは設備関連投資の需要が堅調だったとの声が聞かれた。

先行き判断DIはプラス14と、小幅改善を見込む。自動車や半導体の生産回復を期待する声が出ていた。

大企業・非製造業の業況判断DIは、ロイターがまとめた予測中央値(プラス33)と一致した。「建設」、「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」などは、原材料やエネルギーコスト高が影響して悪化した。「不動産」や「小売」などからは値上げによる買い上げ点数の減少に関する指摘があった。「小売」はプラス19で前回から12ポイント悪化した。

改善した「運輸・郵便」や「電気・ガス」からは価格転嫁の進展が聞かれている。

先行き判断DIはプラス27と、6ポイントの悪化を見込む。引き続き原材料やエネルギーコスト、人手不足や人件費増加が懸念されている。「宿泊・飲食サービス」からはインバウンドの需要の持続性に対する懸念も出ていたという。

事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は2024年度通期で1ドル=144.77円と、3月調査の141.42円から3円超、円安方向に振れている。

大企業・全産業の設備投資計画では、24年度が前年度比11.1%増。予測中央値13.9%増は下回ったものの、過去平均は上回った。

今回の短観の調査期間は5月29日から6月28日。回収基準日は6月13日で、基準日までの回収率は7割程度だった。

<企業の物価・販売価格見通し、3年後や5年後で上昇>

企業の販売価格判断では足元のDIが大企業・中小企業ともに上昇し、原材料価格や人件費などのコストを転嫁する動きが進んでいることが示唆された。大企業・製造業はプラス29で6期ぶりに上昇した。非製造業もプラス29となって2期連続の上昇。

先行きは大企業・製造業がプラス27に鈍化する一方、中小企業では製造業・非製造業ともプラス幅が拡大する見通しとなった。

大企業の仕入れ価格判断の足元のDIは製造業・非製造業ともに2期連続で上昇した。

企業の物価見通しでは、全規模・全産業の1年後が前年比プラス2.4%で前回と変わらず。3年後はプラス2.3%、5年後はプラス2.2%でいずれも前回を小幅に上回り、5年後は過去最高となった。

販売価格見通しは1年後、3年後、5年後がいずれも前回を上回った。1年後が現水準対比でプラス2.8%、3年後がプラス4.1%、5年後がプラス4.8%。3年後と5年後はともに過去最高。

借り入れ金利の水準判断DIは大幅に上昇した。大企業は前回比16ポイント上昇のプラス38で07年6月以来の高水準、中小企業は13ポイント上昇のプラス28で07年9月以来の高水準となった。日銀のマイナス金利解除が影響しているとみられる。

今回の日銀短観は、日銀が7月の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るか判断材料の1つになる。大和証券の末広徹チーフエコノミストは「企業の景況感は非製造業を中心にピークを過ぎつつある印象で、早期の利上げを後押しする結果ではない」と指摘する。

ただし「企業の物価見通しが小幅ながらも引き上がったことから、日銀が期待する賃金上昇に伴う物価上昇圧力、いわゆる『第2の力』が若干強くなったと判断されるだろう」と述べ「早期の利上げ観測は消えそうにない」とする。

ロイター
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