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焦点:米国市場、FOMC後も動揺続く恐れ 指標の注目度高まる

2024年05月02日(木)16時52分

 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は5月1日、連邦公開市場委員会(FOMC、写真)後の会見で、最終的には利下げを実施する方向に傾いていると改めて示したが、米株式・債券市場の動揺は今後も収まらない可能性がある。2017年5月、ワシントンで撮影(2024年 ロイター/Kevin Lamarque)

David Randall Davide Barbuscia

[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は1日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、最終的には利下げを実施する方向に傾いていると改めて示したが、米株式・債券市場の動揺は今後も収まらない可能性がある。インフレの先行きが不透明なため、市場では経済指標への注目度が一段と高まっている。

パウエル氏はインフレ目標に向けた進展が見られないことを認めたものの、利上げの可能性は低いと発言。市場ではインフレ統計が3カ月連続で予想を上回ったことを受け、利上げ観測も浮上していたため、一定の安心感が広がった。

ただ、一部の投資家は市場がパウエル氏の発言を額面通りに受け止める可能性は低いと指摘。昨年12月のハト派転換後、インフレ・雇用指標は予想外に上振れしており、今後も強い経済指標の発表が続けば、利上げ観測が再燃し、株式・債券市場が一段と混乱するリスクがある。

1日の株式・債券市場の値動きは神経質な投資家心理を浮き彫りにした。S&P500指数はパウエル氏の会見中に1%以上昇したが、その後下げに転じて結局0.3%安で終了。10年国債利回りは10ベーシスポイント(bp)近く低下した。

ニューフリート・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、スティーブ・フッカー氏は「FRBが自ら主張した通りにデータ次第で政策を運営するなら、市場はあらゆるデータを精査するだろう。金利の高止まりが続くのか、利上げが再び議論される可能性があるのかを見極める展開になる」と述べた。

<データに注目>

最初の重要な指標が3日の雇用統計だ。労働市場が予想以上に強ければ、年内に予想される利下げ幅がさらに縮小する可能性がある。市場は現在、年内に35bpの利下げを予想しているが、今年1月時点では150bp以上の利下げが織り込まれていた。

月内にはインフレ統計や小売売上高など、さまざまなデータが発表される。

4月のS&P500指数は、利下げ観測の後退を背景に昨年9月以来の大幅な下げを記録。10年債利回りは年初から70bp上昇している。

ブランディワイン・グローバルのグローバル・マクロ戦略責任者、ポール・ミエルチャルスキ氏は「市場の予想は極端から極端へと振れている」と指摘。最終的には予想以上の利下げがあるとし、5年国債と7年国債をオーバーウエートにしていることを明らかにした。

「市場は当然ながら、やや慎重になっている。景気後退なしにインフレ率が2%に低下するというFRBの基本的な見方を裏付けるデータを待っている」と述べた。

<時間切れ迫るとの懸念も>

一部では、年内の利下げについて、時間切れが迫っているではないかと懸念も浮上している。

Tロウ・プライスの米国担当チーフエコノミスト、ブレリナ・ウルチ氏は、FRBが利下げに自信を持てるようになるには少なくとも3カ月分の経済指標が予想を下回る必要があると指摘。

「民間家賃の鈍化が(消費者物価)統計に表れなければ、デフレ圧力が生じるという確信をこれ以上どこまで深めらるのか」とし「インフレ傾向が十分に早い時期に反転するとは思えない」と述べた。

一方で、高金利が近く一部の国内企業を圧迫し始めるとの懸念もある。

アムンディUSの米債券部門責任者、ジョナサン・デュエンシング氏は、高金利が長期化すれば低格付け企業にストレスがかかる恐れがあるとして、投資適格社債を選好していることを明らかにした。

同氏は米国債にも強気の姿勢を示し「今後、経済が失速した場合」に質への逃避が支援要因になると指摘した。

<利下げへの期待>

一方、投資家が利下げへの期待を完全に捨てたわけではない。

シグネチャーFDのトニー・ウェルチ最高投資責任者は、今年のインフレ加速の主因について中東情勢などを背景とするコモディティー価格の上昇だと分析。

1日の原油価格は予想外の米在庫増加やガザ休戦合意への期待を背景に7週間ぶりの安値に下落した。

ウェルチ氏は小型株に強気な姿勢を示し、経済見通しが引き続き良好なら利下げで恩恵を受けるとの見方を示した。

同氏は「私は(FRBが)正しいと確信している。インフレの先行きを正しく予想していると確信している」と語った。

ロイター
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