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今年のアジアのヘッジファンド、08年以来の最悪リターンか

2022年12月20日(火)11時38分

今年のアジアのヘッジファンドは十数年ぶりの最悪の運用成績で終わりそうだ。資料写真、中国・上海、10月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

[香港 19日 ロイター] - 今年のアジアのヘッジファンドは十数年ぶりの最悪の運用成績で終わりそうだ。ユーリカヘッジのデータによると、11月までの成績は平均9.1%マイナスで、この流れが年末まで続けば2008年以降で最悪になる。

特にロング・ショート戦略ファンドは中国株の急変動に足をすくわれた。習近平国家主席が進めた「共同富裕」の諸策などが中国ロング型の著名ファンドマネジャーの足を引っ張った。一方、マクロ戦略ファンドは世界的な金利上昇の流れをしのぎ、利益を上げた。

アジアの株式市場全般はもっと弱く、11月までで見るとMSCI中国株指数は約27%安、日本を除くアジア株指数は約20%安だ。これに比べるとヘッジファンドの下落はまだましかもしれない。

ヘッジファンドの戦略別に見ると、アジア株ロング・ショート・ファンドは12%安、グレーターチャイナのロング・ショート・ファンドは14%安。一方でアジアのマクロ・ファンドは12%上昇、アジアのマルチ戦略ファンドは1%上昇している。

今年は投資する銘柄を選ぶ難しさが鮮明だった。

サセックス・パートナーズのパトリック・ガーリ氏は「市場はこれまでのところファンダメンタルズにあまり重きを置いていない」と指摘。「いつになれば再びファンダメンタルズ戦略が実を結ぶようになるか、だれにも予測できない。それまではファンダメンタルズ重視のマネジャーよりも、(相場の高下の流れを分析して売り買いする)トレーダーの方が有利かもしれない」と語った。

今年は電気自動車(EV)やインターネット関連企業などのグロース(成長)株は地に落ちた。

世界的な金利上昇や中国などの規制強化、中国による格差是正を目指す政策の不透明感という「三重苦」が背景だ。

アスペックス・マネジメント(香港)の株式ロング・ショート・ファンドは19年に54%上昇、20年に96%上昇、21年に30%上昇を記録してきたが、ロイターの閲覧した文書や消息筋の話によると、今年は11月末までに9.8%下落している。

ロイターが確認した文書によると、フェンフー・グループ(シンガポール)の旗艦ファンド、フェンフー・アジア・ファンドは昨年27%上昇したが、今年は11月までに5%下げた。

しかし中国市場に対して防衛的な戦略で臨んだか、少なくとも打撃を受けた中国などのハイテクセクターから逃げ出したファンドは善戦したようだ。

APSアセット・マネジメント(シンガポール)は、オフショアの「オール・チャイナ・ロング・ショート・ファンド」こそ11月末までに17%下落。ただ、オンショアの「チャイナ・ロング・オンリー・ファンド」は人民元ベースでは8%上昇した。同社のウォン・コック・ホイ最高投資責任者によると、今年は慎重な相場観で運用に臨み、インターネットプラットフォームや電子商取引関連の銘柄を一切組み込まなかった。

複数の消息筋によると、香港の株式ロング・ショート・ファンドのタイレン・キャピタルに至っては、ハイテク株を売る戦略が功を奏して11月末までに15%上昇している。

一方、マクロ・ファンドは米中関係の緊張や金利上昇が市場を揺さぶった中で好調を維持した。シンガポールのアジア・ジェネシス・アセット・マネジメントの旗艦マクロ・ファンドは米国株と日本株を売りにしたことが幸いし、11月末までに15%上昇したという。

ロイター
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