ニュース速報

ビジネス

ドル/円が12年半ぶり高値から下落、利食い売り先行

2015年05月28日(木)15時54分

 午後3時のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点に比べ若干ドル高/円安の123円後半。午前11時過ぎからドル買い/円売りの勢いが強まると、上値めどとみられていた124.14円を一気に上抜け、2002年12月以来、12年5カ月ぶりの高値となる124.30円をつけた。ソウルで2013年8月撮影(2015年 ロイター/ Kim Hong-Ji)

[東京 28日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点に比べ若干ドル高/円安の123円後半。午前11時過ぎからドル買い/円売りの勢いが強まると、上値めどとみられていた124.14円を一気に上抜け、2002年12月以来、12年5カ月ぶりの高値となる124.30円をつけた。だが、午後に入って利益確定売りが先行し、午前の上げ幅の4分の3を返上した。

ドル/円は朝方から123.60─70円台で小動きが続いていたが、仲値通過後に123.50円まで下押しこの日の安値をつけた、下値ではすかさず米系ファンドの買いが流入したとされ、下げも限定的だった。

124円台にかけては、シンガポール勢など朝方から打診買いを入れてきた海外勢からの買いが散見され、ドルを押し上げた。株価が連騰していることもドル買い/円売り安心感につながったという。

この日のドル買いは海外短期筋主導とされるが、一部では、事業会社の海外直接投資にからむ外貨手当がドル買いにはずみをつけたとの見方も出ている。

午後の取引で、ドルは一時123.65円まで下落し、午前の上げ幅を4分の3返上する格好となった。短期筋の利益確定売りが主因とみられる。

足元のドル高進行について、JPモルガン・チェース銀行、チーフFX/EMストラテジストの棚瀬順哉氏は、「ドルが全般に強いこと、当局者から強い円安けん制発言がでていないこと、海外勢が新たな円ショートの積み増しに動いていること」などを要因としてあげている。

<生温い円安けん制>

午前の為替市場では、菅官房長官の発言後に、ドル買いが勢いづいた。因果関係は明らかではないが、為替市場では、政府・日銀の円安けん制が、これまでのところ「生温い」(外銀)との見方が強い。

菅義偉官房長官は28日午前の記者会見で、ドル高/円安が進んでいることについて、急激な為替相場の変動は望ましくないとした上で、引き続き注視すると語った。

一方、円安を受けて株高が進んでいることに関し、「日本経済の実態が大きく変化してきている」と述べ、有効求人倍率などさまざまな数字上では、回復傾向が見えているとの見方を示した。

市場では、「政府は一応、円安をけん制しているが、スピード調整ができればいいという印象だ」とマネックス証券、シニア・ストラテジストの山本雅文氏は言う。

一方、円安について警戒する財界の声は、現時点でそれほど大きくなっていない、と同氏は付け加える。

米国当局のけん制やドル高を背景とする米国株安が日本株に波及しないかぎり、円安けん制のトーンは変化しないだろう、と山本氏は述べる。

官房長官の発言だけでなく「麻生太郎財務大臣と黒田東彦総裁もこれまでの了解事項を確認しただけで、全然(ドル高/円安を)止めようという感じではない」(市場関係者)として、近いうちに125円をつけに行くのではないかとの見方が出ていた。

時事通信によると、日本商工会議所の三村明夫会頭は27日の記者会見で、123円台まで下落した円相場について、「なぜ下落したのか分からない。日本のファンダメンタルズは決して悪くない」と述べたうえで、「円安弱者がいるわけだし、日本経済全体でメリットを享受する行動を企業は行うべきだ」とした。

また、共同通信によると、同会頭は、中小企業にとって為替は110円程度が適切とした。

<日生幹部「オープン外債への投資控える」>

日本生命幹部は、ドルが割高となった環境で、オープン外債への投資は控えざるをえないとしたうえで、米国債以外で割安なところを探すと述べた。

明治安田生命幹部は、当初計画通り、オープン外債中心に積み上げる方針を明らかにした。

<ギリシャ支援協議に動きがあるか>

ユーロ/ドルは1.08ドル後半から1.09ドル前半で方向感に乏しい値動きとなった。市場では、ギリシャの支援協議の動向に注目が集まっている。

前日海外時間、米国の年内利上げ観測やギリシャ問題への懸念で、ユーロ/ドルは一時1.0819ドルまで下落し、1カ月ぶりの安値をつけた。その後、ギリシャと債権団が金融支援をめぐる協議で合意が近いとの報道があって持ち直したが、「ギリシャ側から出てくるコメントだけをあてにするのは危険だ」(外為アナリスト)との声も出ていた。

ドイツでは29日までの日程で主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が行われている。ギリシャ支援協議は公式な議題には含まれていないものの、協議には上る見通しだ。

ドル/円   ユーロ/ドル ユーロ/円

午後3時現在 123.79/81 1.0917/21 135.15/19

正午現在   124.14/16 1.0891/95 135.21/25

午前9時現在 123.73/75 1.0896/00 134.83/87

NY午後5時 123.66/69 1.0904/09 134.81/85

(為替マーケットチーム)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中