コラム

民主主義の危機は民主主義のシステムそのものに内在している

2024年12月14日(土)08時20分
民主主義

辞表の提出に追い込まれたフランスのバルニエ首相(12月3日) BENJAMIN GIRETTEーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<世界の民主主義国で相次いでねじれ現象が起き、あたかも民主主義そのものが「黄昏」に向かっているように見える。一義的にはインフレや移民問題が原因だが、民主主義のシステムそのものに民主主義を破壊する要因は潜んでいる>

世界の主要な民主主義国が苦しんでいる。新しい冷戦の脅威、欧州や中東の戦争、貿易をめぐる対立、社会不安の増大、世界経済の停滞といった不安材料が山積しているにもかかわらず、政治的な二極化が進行して政治が機能不全に陥っているのだ。

日本では、10月の総選挙で与党が衆議院の過半数を失い、石破新首相は政権運営に苦慮している。アメリカでは11月、重罪で有罪判決を受けている人物が──「就任1日目は独裁者になる」と言っていた人物が──大統領への返り咲きを決めた。


やはり11月には、ドイツでショルツ首相の連立政権が予算をめぐる対立で崩壊し、政権は少数与党に転落。近く議会で首相に対する信任投票が行われる。12月4日には、フランスでも議会でバルニエ内閣の不信任案が可決されたばかりだ。

近年は、『民主主義の終わり方』『民主主義の黄昏(たそがれ)』『西洋リベラリズムの退潮』といった書籍が続々と出版されている。こうした民主主義の危機に関して、大半の論者が目を向けているのは、もっぱら政治的・経済的要因だ。確かに、そうした問題は政治の機能不全を生んでいる直接的な原因ではある。しかし、民主主義国を悩ませている政治的分断の根本原因は、民主主義の理念と現代社会の性格そのものにある。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-独インフレ率、12月は前

ワールド

韓国裁判所、尹大統領の拘束令状を再発付

ビジネス

ユーロ圏、消費者インフレ期待が上昇 今後1年2.6

ビジネス

ユーロ圏CPI、12月速報前年比+2.4%に加速 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 2
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻止を喜ぶ環境専門家たちの声
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    空腹も運転免許も恋愛も別々...結合双生児の姉妹が公…
  • 7
    ウクライナ水上ドローンが「史上初」の攻撃成功...海…
  • 8
    ウクライナの「禁じ手」の行方は?
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    プーチンの後退は欧州の勝利にあらず
  • 1
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 2
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 3
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 4
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 5
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 6
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 7
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 8
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 9
    「これが育児のリアル」疲労困憊の新米ママが見せた…
  • 10
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story