コラム

元CIA工作員が、かつての敵国ベトナムを訪問して新たに発見したこと

2024年11月27日(水)08時00分

しなやかで柔軟性のある「バンブー外交」

経済の好調ぶりはデータにも表れている。86年に始まった経済自由化政策「ドイモイ(刷新)」の下、今やベトナムはアジアで最も速いペースで中流層と富裕層が増加している国になった。国民1人当たりの所得はこの10年で8倍に増加。かつて戦火を交えたアメリカとの貿易額も、02年の30億ドルから1400億ドルへと飛躍的に増えている。過去5年間で対米輸出は230%増加、輸入は175%増加した。ベトナムの対米輸出の最大の品目は、経済大国となるための「登竜門」と言えるハイエンドの機械と工具だ。1人当たりのGDPは2004年以来、8倍になった。

もちろん、北の隣国である中国の存在感は無視できない。アメリカと中国の両方とうまくやっていくことが不可欠だ。


その点、ベトナムは米中両国と「包括的戦略パートナーシップ」を結ぶなどして、竹(バンブー)のようにしなやかで柔軟性のある「バンブー外交」を実践してきた。米中間の緊張が高まっている状況も自国経済の追い風にしている。18年にアメリカのトランプ政権が対中関税を引き上げて以降、ベトナムの対米輸出は大幅に増加した。

ベトナムの人口の半分は30歳以下だ。地下トンネルと戦争の歴史は遠い過去の記憶になりつつある。これからは、ベトナムの新しい世代の力によって、活力のある経済と自由な社会が築かれていくのだろう。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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