元CIA工作員が、かつての敵国ベトナムを訪問して新たに発見したこと
しなやかで柔軟性のある「バンブー外交」
経済の好調ぶりはデータにも表れている。86年に始まった経済自由化政策「ドイモイ(刷新)」の下、今やベトナムはアジアで最も速いペースで中流層と富裕層が増加している国になった。国民1人当たりの所得はこの10年で8倍に増加。かつて戦火を交えたアメリカとの貿易額も、02年の30億ドルから1400億ドルへと飛躍的に増えている。過去5年間で対米輸出は230%増加、輸入は175%増加した。ベトナムの対米輸出の最大の品目は、経済大国となるための「登竜門」と言えるハイエンドの機械と工具だ。1人当たりのGDPは2004年以来、8倍になった。
もちろん、北の隣国である中国の存在感は無視できない。アメリカと中国の両方とうまくやっていくことが不可欠だ。
その点、ベトナムは米中両国と「包括的戦略パートナーシップ」を結ぶなどして、竹(バンブー)のようにしなやかで柔軟性のある「バンブー外交」を実践してきた。米中間の緊張が高まっている状況も自国経済の追い風にしている。18年にアメリカのトランプ政権が対中関税を引き上げて以降、ベトナムの対米輸出は大幅に増加した。
ベトナムの人口の半分は30歳以下だ。地下トンネルと戦争の歴史は遠い過去の記憶になりつつある。これからは、ベトナムの新しい世代の力によって、活力のある経済と自由な社会が築かれていくのだろう。

アマゾンに飛びます
2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
トランプが命じた「出生地主義の廃止」には、思わぬ悪影響が潜んでいる 2025.01.31
大統領の「自爆」クーデターと、韓国で続いていた「軍人政治」 2024.12.26
民主主義の危機は民主主義のシステムそのものに内在している 2024.12.14
元CIA工作員が、かつての敵国ベトナムを訪問して新たに発見したこと 2024.11.27