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安倍、岸田と相次いだテロは民主主義の危機のシグナルだ
選挙演説に立った岸田首相に爆弾を投げ込み取り押さえられる男(4月15日、和歌山市の雑賀崎漁港)
<岸田首相に爆弾を投げつけた容疑者は、日本の選挙は「普通選挙」とは呼べず、政治家二世や裕福な人しか立候補できない「制限選挙」だと憤っていた>
4月15日、岸田首相が選挙演説中に爆発物を投げ込まれる事件が発生した。幸い岸田首相は無事だったものの、その場で現行犯逮捕された青年は、犯行の動機を黙秘し続けていると報じられている。事件の動機を解明することは犯人に同情を集めるので解明するべきではないという議論も巻き起こる一方、SNSではこの実行犯のものと思われるアカウントが発見されており、彼の政治思想が明らかになりつつある。
実行犯は「制限選挙撤廃」を主張するナショナリスト
報道によれば、実行犯は地元の自民党市議会議員の集会に出席しており、選挙供託金の撤廃や、被選挙権年齢の引き下げを主張していたという。彼のものとみられるSNSのアカウントでも、被選挙権を得る年齢の高さや供託金の高額さだけでなく、世襲政治家の多さや特定の宗教との癒着なども念頭に置いたうえで、「日本で行われているのは制限選挙であり、普通選挙は行われていません。国民が立候補出来なければ政治腐敗が横行するのは当たり前です」と主張していた。彼は、被選挙権年齢の規定や供託金のせいで参議院選挙に立候補出来なかったと主張し、国に対して損害賠償を求める裁判を起こしていたことも明らかになっている。事件はこの訴えが高裁で棄却された数日後に発生している。
また彼は、外国人留学生の「優遇」を批判し、多様性を認めるか否かは選挙結果で判断されるべきだと杉田水脈議員に対するリプライで主張していたことから、国粋主義的ナショナリストとしての側面を持っていることもわかる。
「制限選挙」に憤ったとしても
人類の歴史をみれば、貴族や富裕層ではない普通の人々が参政権を獲得するためには相当の血が流されている。ときにはテロなどの暴力が用いられてきたこともあり、我々の選挙権はそうした苦闘に末に獲得されたものだということは忘れられてはならない。
だが、この青年が求める「被選挙権年齢の引き下げ」「供託金の撤廃」といった政策がいかに民主主義のためでも、物理的な暴力を用いて成し遂げようとすることは許されない。世界を見れば18歳以上で地方議員や国会議員になれる国も多く、また日本の供託金が高額なのも間違いない。世襲政治家や統一教会との癒着問題も無視されてはならない。とはいえ、もし彼の動機がこのようなものであったとしても、こうした理由はこの青年が極端な選択をしたことについて正当性を与えるものではない。このことは強調しておく必要があるだろう。
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