コラム

最高値更新の日本株...「世界と闘う覚悟を持った経営者が日本に出てきた」藤野英人

2024年03月26日(火)16時45分

例えば、日本のコンビニでサンドイッチを買う場合、約300円で非常に美味しい商品が手に入る。一方、欧米に行けば同様の商品が3倍以上の価格で販売されている上、品質は日本よりも3倍下回ると藤野氏は実体験を語る。つまり、約9倍の価値の差があるということだ。

「世界中の人が日本に来て思うことが、『なんでこんなに安くて美味しいの?』。これがインバウンド観光が盛んな理由。この差は必ず解消されていくので、日本は今後物価が上がり、インフレが起きることは間違いないと多くの外国人投資家が思った。そして、日本の株・土地を買う動きが加速していった」

経済の原理からすると、行き着いたものは必ずもとに戻る。長過ぎたデフレ局面にようやく終止符が打たれ、少しずつインフレに向かいつつあるのが今の日本の状況だという。

「今は労働者不足で、若い人を採用するには賃金を上げなければならない。大学卒の初任給は2023年度から上昇傾向にあり、これに乗じて元からいる社員の賃金も今年の4月以降に上がる可能性がある」(編集部注:その後、春闘での賃上げ率は33年ぶりに5%を超えた)

さらに藤野氏は、経営者の意識の変化にも触れた。

「この20~30年ほどは、比較的『眠い』経営者が多いと思っていた。社長になるのがゴールという人が多かった。しかしコロナを経て日本の会社は変わりつつあり、生き残るために世界と競争して闘う覚悟を持った経営者が出てきた。さまざまな条件が重なって、この30年のデフレからインフレの時代のとば口に入ったと考えられる」

業績・賃金の水準が上がり、株価が上がる。好循環に入った日本株式市場の動向は今後も目が離せない。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。

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