コラム

将棋界を変革したAIは投資の世界をどう変えるか(藤井聡太×藤野英人)

2022年07月01日(金)10時45分
藤井聡太

藤井聡太叡王 「お金のまなびば!」より

<AIの進化は将棋界を大きく変えたが、AIを駆使して研究をする藤井聡太叡王はそれをどう捉えているのか。ひふみシリーズの藤野英人氏は「AIは投資の世界でもやがて革命を起こす」と予測する>

人間をはるかに凌駕するほど進化した将棋AI。2011年にAIと棋士が対局する「電王戦」が始まったことで、広く注目されるようになった。

将棋中継の画面にAIの形勢判断が表示されることが多くなり、今やプロの間でも将棋の分析や研究にAIを使うことが当たり前になるほど浸透している。

なかでも、現在五冠の藤井聡太叡王は、AIを駆使して深い研究をする棋士として知られている。そんな彼は、AIが将棋の世界に導入されたことにはどんなイメージを抱いているのか。

ひふみシリーズの最高投資責任者、藤野英人氏が運営するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画「【藤野英人×藤井聡太①】「ひらめき」天才の思考法とは?」で語られた内容を一部抜粋して紹介する。

藤井叡王は、「今までは多くの人が『将棋は観ても分からない』と思っていたが、数値化されることでそのハードルが下がった。多くの人に興味をもってもらえるのはいいことだと思っている」と、AIについて好意的に答えた。

電王戦でAIがプロの棋士を破ったことはショッキングな出来事で、当時は「人の将棋の価値がなくなるのでは」と危惧する声もあったと、藤野氏は振り返る。だが、これは何も将棋界に限ったことではない。

「AIが普及すると『人間社会にとってつまらなくなるのではないか』という未来を謳っている人が多かった。何でもAIが代行してしまい、仕事が盗られるという未来像があった」と、藤野氏は語る。

これに対し、藤井叡王は「電王戦を通して、AIが人間より強くなる過程を見られたことは意義があると思う。社会としていろいろ変わることはあると思うが、AIが例えば人間より運転が上手いとしても、人間も運転を楽しんでいい。人間の楽しみ自体をAIが奪うわけではない」と言う。

すると、藤野氏も「AIが楽しんでいるわけではない。楽しむ対象は僕ら。AIが登場したことにより、観る材料や考えること、客観性が増えて、楽しみ方が変わった」と同意。

AIが進歩した分、人間も強くなった。さらに局面を分かりやすく説明してくれるようになったことで、対局のストーリー性が際立ち、観る人にとっても楽しみが増えたと、藤井叡王は話す。

AIが人間の存在を脅かしたわけではなく、新たな可能性を与えてくれたというわけだ。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story