お金のネガティブな印象と悪しき日本の「頑張りズム」
面白い例え話がある。明治から大正にかけて、馬や人力車に代わる新たな移動手段として蒸気機関車が普及し始めた。当然、人力車の利用者は激減する。苦境に立たされた車夫たちは、腕立て伏せなどのトレーニングで筋肉をつけ、蒸気機関車に対抗しようとしたという。
蒸気機関車とスピードを競っても人間に勝ち目はないわけだが、当時それは常識ではなく、多くの人は「頑張れば何とかなる」と考えていた。藤野氏は「今の日本でも、こんな笑い話のようなことをしている可能性がある」と指摘する。
一方、31歳の若さでIT業界の第一線で活躍する竹谷氏は、意外にも「頑張ることは苦手」と話す。
「やらなくていいことと、やらなくてはいけないことを明確に分け、『サボる』ことを目標としてきた。怠惰であることを自覚している人は、怠惰にならないような仕組みづくりと、緩急をつけることが大事」
緩急のつけ方、つまり効率や生産性、付加価値の上げ方を身につけるためには最低限の経済知識が必要だ。
もちろん、経済を学べば誰もがお金持ちになれるわけではない。しかし、お金に支配されずにうまく付き合いたい人は、まずはお金のことを「知る」必要があるだろう。
構成・酒井理恵
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