コラム

紛争チョコは甘くない

2011年02月15日(火)16時52分

カカオ豆の最大の産地コートジボワールでは児童労働も問題に Luc Gnago-Reuters

バレンタインの影の部分 カカオ豆の最大の産地コートジボワールでは児童労働も問題に
Luc Gnago-Reuters


 バレンタインデー反対派はいつも、大企業が悪魔のマーケティングで恋人たちを盛り上げるせいで、シングルたちがどれだけ肩身の狭い思いをしているか不平を言う。だが、バレンタインには世界的な影響もある。

 最高にロマンチックな贈り物だったダイヤモンドは、一部の産地では不幸にも殺し合いを招く紛争ダイヤになってしまった。バレンタインのチョコレートが世界のカカオ産地に与える影響も小さくない。

 チョコレートの原料となるカカオ豆の問題は、世界最大の生産国コートジボワールで政情混乱が続く今年はとりわけ重要だ。NGOのAvaazは、ハーシー、ネスレ、キャドバリーなどのチョコメーカーやカーギルなどの穀物メジャーにコートジボワールのカカオをボイコットするよう呼びかけている。昨年11月28日の大統領選で敗北した後も、大統領の座に居座り続けているローラン・バグボの資金源になるからだ。

 国際的にも認められた大統領選の勝者、アラサン・ワタラ元首相は、バグボの資金源を断つためにココアの輸出を1カ月禁止した。バグボが居座り続ける限り輸出禁止を延長すると警告している。

■児童労働の結晶かもしれない

 別のNGOグリーン・アメリカは、カカオ生産に児童労働が使われていると訴える。米国務省が09年に出したコートジボワールに関する人権報告書によると、カカオ豆生産地に住む16〜17歳の子供の4人に1人近くが、ココア農場で過酷な労働に従事したことがあった。グリーン・アメリカは、フェアトレードのチョコレートを購入すれば、小規模農家を支援し環境への影響を減らすのと同時に児童労働も減らすことができると言う。

 一方、ロイター通信によれば、ココアの先物価格は大統領選以降20%以上上昇した。禁輸が続けけば価格はさらに上がり続けるだろう。

 特別な人への贈り物は、紛争ダイヤや紛争チョコレートの代わりに優しいハグにしてはどうだろう。味もきっとそのほうが甘い。

──スザンヌ・マーケルソン
[米国東部時間2011年02月14日(月)17時47分更新]

Reprinted with permission from FP Passport 15/2/2011.© 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story