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「最悪のシナリオ」検討──太陽フレア対策に日本政府も本腰
大規模な太陽フレアが引き起こす地球への悪影響は、到達する電磁波や物質によって、①8分後、②30分~2日後、③2~3日後の3段階に分けて考えられます。
第1段階は、光の速さで地球に届くものによる影響です。太陽フレアの観測と同時に、X線や紫外線などの強い電磁波によって、特に昼間側の地域で、短波通信に障害が起きやすくなります。すると、携帯電話や放送、防災無線などの利用に影響するおそれがあります。さらに、カーナビなどのGPS(衛星測位システム)の精度が落ちたり、空港管制レーダーにも不具合が現れ始めたりもします。
第2段階は、高エネルギー粒子が地球に到達することによって、特に北極・南極地域に悪影響が見られます。人工衛星の内部回路が故障するリスクや、ISS(国際宇宙ステーション)の宇宙飛行士や航空機に乗っている人たちが通常よりも多く放射線を浴びる可能性が高まります。
第3段階は、CME(コロナ質量放出)の影響が全地球規模で現れます。CMEは、太陽から惑星間空間にプラズマの塊が放出される現象です。プラズマは電気を帯びたガスで、太陽から秒速1000キロ近いスピードで飛び出すこともあります。地球を直撃すると大災害になるおそれがあり、直撃しなくても人工衛星が帯電することで軌道に影響を受けたり、地上の送電線に影響して電力供給にトラブルが起きたりする可能性があります。
大規模な太陽フレアの発生により、89年3月にはカナダで約9時間にわたる大規模停電が発生し、約600万人に影響が出ました。22年2月には太陽フレアによって発生した「磁気嵐」の影響で、実業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙企業・スペースX社が打ち上げた人工衛星49基のうち40基が機能を喪失し、大気圏に突入しました。
天気予報の精度は低下、自動運転にも支障
22年6月に総務省の「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」が公表した報告書では、100年に1回の頻度で起きるとされる大規模な太陽フレアが2週間連続で発生する「最悪シナリオ」を想定して、悪影響を考察しています。日本において、ある自然災害に対して全分野に渡って最悪シナリオを策定する試みは初めてとのことです。
通信や放送は2週間、断続的に不通となります。個人では携帯電話での通話やネット接続が使用し難い状況になるだけでなく、110番や119番などの緊急通報が全国的につながりにくくなると言います。防災無線や船舶無線にも影響し、災害や遭難事故での救助要請が困難になります。
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