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他の動物のミルクを飲むヒトの特殊性と、大人が牛乳でお腹を壊す理由
さらに同グループは、先史時代のユーラシア人(ヨーロッパとアジアの人々)計1786人のDNAデータを用いて、ラクターゼ活性持続症に関する遺伝子変異の発現頻度を調べました。ラクターゼ活性持続症は、紀元前4700~4600年頃に初めて現れました。けれど、初めて検出されてから約4千年後の紀元前1000年頃までは、一般的ではなかったことも分かりました。
先史時代のヨーロッパでは、大部分の人々が乳糖不耐症であった頃でも動物のミルクが広く使用されていたこと、ラクターゼ活性持続症が出現してから4千年もの間、広まりを見せなかったことから、研究グループはミルクの消費と乳糖耐性を持つ人の増加には強い関連は見られないと考えました。そこで、紀元前1000年頃に乳糖耐性が急速に広まり始めた原因について「人類に危機的な状況が起きたから」という大胆な仮説を立てました。
食物が十分にある状況ならば、乳糖を分解できない人は無理をしてまで牛乳をたくさん飲む必要はありません。けれど、農作物の不作の状態が続く飢饉になれば、人々は大量のミルクを飲んで栄養を取る必要があります。乳糖を分解してエネルギーを得る能力がない人は淘汰されるでしょう。
また、下痢を伴う感染症が流行すると、人々は脱水症状を起こしやすくなります。乳糖不耐性で下痢をしてしまう人は脱水症状が加速して、生命が脅かされる可能性が高まります。
研究者たちは、飢饉や感染症が蔓延する世界では乳糖分解能力を持つ者が生き残る淘汰が起こり、人類の間に乳糖耐性が急速に広まったと説明します。ミルクは発酵させることで乳糖を減らすことができますが、先史時代の人々はそのまま飲むことが大半だったと考えられており、乳糖耐性を持つか持たないかの生存への影響は大きかったと考えられます。
哺乳動物の「戦略」としてプログラムされた乳糖不耐症
そもそもなぜ人類は、生まれた時には持っているラクターゼ活性を、成人する過程で手放すような進化をしたのでしょうか。酪農学園大の石井智美教授は「子供の食物を大人に横取りされないため」と説明します。
ヒトが家畜のミルク利用を始めたのは、野生動物の家畜化直後からではなく千年ほど後からだと分かってきました。おそらく、母畜を失った子畜の哺乳をヒトが介助する目的で他の母畜から搾乳を行ったのがきっかけとなったと考えられるそうです。
けれど、ヒトがヒト以外の哺乳動物のミルクを利用するのは、進化においては想定されていなかった状況のはずです。大人が乳糖不耐症になることは、哺乳生物の戦略として「子供の食物である自己の種のミルクを大人が奪わないようにプログラミングされている」と考えるべきだと言います。
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