コラム

台湾と中国、コロナが浮き彫りにした2つの「中国語政権」の実像

2020年05月27日(水)09時40分

それでも、中国は歴史を書き換えるのに躊躇しない。前例はいくらでもある。

第2次大戦中の共産党は毛沢東の指導の下で、習近平の故郷である陝西省の僻地・延安に立て籠もっていた。彼らはアヘンの原料であるケシを栽培し、女性とダンスに興じ、そして日本軍と死闘を繰り返す国民政府軍に背後から一撃を加えていた。「共産党が全国人民をリードして抗日戦争に勝利した」という神話が作られたのは、ソ連とモンゴル人民共和国連合軍が日本軍を追い出してからだ。

それだけではない。中国が日本軍をアジア各地で殲滅したから世界は対ファシズムの戦いに勝ったのだ、と自国の役割を誇張している。

その論理は現在も健在だ。中国は自国民を犠牲にしてまでウイルスを封じ込め、世界規模で流行する新型コロナの抑止に貢献した、と話をすり替えている。

世界に成功モデルを示した台湾は国際社会で孤立させられ、歴史を改ざんし続ける中国はその成功物語を吹聴している。危機が去った後に、われわれはこの2国に対してどう行動すべきであろうか。

<本誌2020年6月2日号掲載>

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2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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