コラム

アメリカ離れ、対中接近へ──『文明の衝突』の罠に陥る日本

2018年09月15日(土)14時20分

最近の政財界の動きもそうだ。日中両国の業界団体は8月28日に北京で覚書に調印し、電気自動車(EV)向け急速充電器を共同開発すると発表した。技術力の高い日本と世界最大の市場を抱える中国が組めば、欧米勢が入り込む空間は狭められる。日中の協力で部品の規格統一が進めば、欧米のメーカーは主導権を握ることができなくなる。

こうした動きは個別の企業の独自判断だけではできない。日本は既に官民一体となって中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に協力すると宣言。世界各地のインフラ整備に日中両国が共に参加するという動きも、トランプ政権の対中経済制裁とは逆行している。米中貿易戦争において、米同盟国の同調は制裁の効果と成否に関わる。それだけに、ホワイトハウスは日本の暴走に神経をとがらせている。

メディアのリークに驚くばかりの日本には、西洋と儒教の「文明の衝突」に備えた戦略は見えてこない。

<本誌2018年9月18日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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