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上司の「終活」──人生100年時代の上司論
「逃げ切れる」思考の50代管理職が組織の新陳代謝を阻害する(写真はイメージ) laflor-iStock
<上司の立場に安住し、終身雇用でいちばん恩恵を受けているくせに働かない50代は上からも下からも問題視される不良管理職に落ちかねない>
冗談のような本当の話
「冗談だろ?」
初対面なのに、礼儀を欠いた言葉遣いをしてしまった。相手は大手企業の課長。52歳。「またまた御冗談を」と言えばよかったのに、あまりに時代遅れな感覚に触れ、理性が飛んだ。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。ある企業の経営者に頼まれ、この課長と面談しているときに言われた。
「あと10年、凌げば逃げ切れるじゃないですか」
と――。
この課長は、かなり以前から経営陣に目を付けられていた。なかなか営業目標を達成しないから、どういうつもりで組織マネジメントをしているのか。本音を聞きだしてほしいと言われ、私が面談に臨んだ。そして言った第一声がコレである。
年収1500万ほどもらっている課長の、この「逃げ切れるじゃないですか発言」にはあきれた。動転して「冗談だろ?」と、口にしてしまったのも無理はない気がする。
会社に対する誠意を、まるで感じられなかったからだ。
埋めがたい意識の差
日経BP社の調査によると、若手社員(30代以下)の3割以上が、「50代の働きが十分ではない」と答えている。また、「日本型雇用システムにおいて最も恩恵を受けているのは50代」という回答もあった。若者たちほど、終身雇用や年功序列といった仕組みに違和感を覚えているのだろう。
ところが30代の意識と異なり、50代は自画自賛だ。自分たち50代は、十分な働きをしているし、日本型雇用の恩恵を受けているどころか、不遇な時代を送ってきた、と感じている。(いずれも日経BP社調べ)
どちらの感覚が正しいかは、経営陣がいちばんわかっている。現実はシビアだ。
希望退職ドミノが止まらない医薬品業界や大手銀行のみならず、2018年度決算で最高益を出したキリンでさえも、45歳以上を対象に早期退職を募った。
好業績であっても「選択と集中」による事業部の統廃合、売却は増えるいっぽう。とくに実務を行わない「上司」という肩書の人への風当りは強い。
人生100年時代と言われる昨今、上司のまま定年まで逃げ切れるはずがないのだ。
上司は10年で終わりにしよう
一般的に、上司という肩書は係長、課長、部長の3種類と言われる。
それぞれの「昇進平均年齢」を調べてみると、係長が32.7歳、課長が39.4歳、部長が47歳だ(「般財団法人 労務行政研究所」調べ)。
ということは、32歳から上司としての業務が増えていき、課長になる40歳ごろには、現場での実務からほとんど離れた状態で働くことになる。
大卒22歳で入社した場合、32歳までの10年が実務担当者。その後、定年退職する60歳までの28年間を「上司」として過ごす。これが最近までの日本企業の定番だったと言えるだろう。
もし40歳で上司になったとしても、18年が実務担当者だ。その後の20年が上司。こう考えると、上司と呼ばれる人は、上司をしている期間が、かなり長いことになる。
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