ウクライナ支援反対のスロバキア首相銃撃で負傷、生命の危機脱する 「政治的動機」と内相
FILE PHOTO: Slovakia's Prime Minister Robert Fico speaks during a press conference with German Chancellor Olaf Scholz in Berlin, Germany, January 24, 2024. REUTERS/Nadja Wohlleben/File Photo
中欧スロバキアのフィツォ首相(59)が15日、中部ハンドロバで銃撃され、重傷を負った。一時は深刻な容体とされたが、政府高官によると、搬送先の病院で治療を受けて生命の危機は脱した。
政治的な暴力事件が稀なスロバキアで首相暗殺未遂事件が発生したことに衝撃が広がっている。
タラバ副首相兼環境相は英BBCで「手術がうまくいった」とし、「現時点で命に関わる状態にはない」と述べた。
銃撃犯は銃弾5発を発射。タラバ氏によると、そのうち1発がフィツォ氏の腹部を貫通し、もう1発は関節に命中した。
地元メディアは手術が終わり、容体は安定していると報じた。
シュタージ・エストク内相は「この暗殺(未遂)は政治的な動機によるもので、犯人は大統領選後間もなく(犯行を)決断した」と述べた。4月に実施された大統領選ではフィツォ氏に近いペレグリニ元首相が勝利した。
地元メディアによると、銃撃犯は71歳の男でショッピングモールの元警備員。スロバキア作家協会の会員で、詩集を3冊出版しているという。
事件が発生したのは現地時間午後2時半(日本時間午後9時半)過ぎ。フィツォ氏はハンドロバで政府会合に出席していた。中部の中心都市バンスカービストリツァにヘリコプターで搬送され緊急治療を受けた。
事件の目撃者はロイターに対し、フィツォ氏が建物から出て、群衆と握手しようとした際に銃声が聞こえたと述べた。その後、警察は男を取り押さえた。
スロバキアは欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)加盟国。事件を受け欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「このような暴力行為はわれわれの社会に存在するべきではなく、われわれの最も貴重な共通の利益である民主主義を損なうものだ」と非難した。
バイデン米大統領は声明で「この恐ろしい暴力行為を非難する」とし、スロバキアへの支援を申し出た。
ロシアのプーチン大統領は「フィツォ首相は勇敢で強い意志を持った人物だ」とした上で、銃撃事件を「恐ろしい」犯罪と非難した。
フィツォ氏は昨年、4期目の首相就任を果たした。30年にわたるキャリアの中で、親欧州派の主流派とEUや米国の政策に反対する国家主義的な立場の間を行き来してきた。近年はハンガリーのオルバン首相に同調し、ロシアの侵攻を受けているウクライナに対する西側諸国の支援への批判を強め、ウクライナの将来的なNATO加盟に反対を表明していた。
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