最新記事
日本社会

時給分布から見える、フリーランスの悲惨な労働実態

2024年3月27日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
フリーランスワーカー

正規と非正規の格差も大きいがフリーランスの労働実態はさらに過酷だ Roman Samborskyi/Shutterstock

<非正規職員と比較しても稼ぎは少なく、労働時間は際限なく長くなりがち>

働く人の収入を知るのに最もいい資料は、総務省の『就業構造基本調査』だ。『賃金構造基本統計』(厚労省)や『民間給与実態調査』(国税庁)は一定規模以上の企業の雇用労働者に限定されるが、『就業構造基本調査』では自営等も含む全労働者の稼ぎを知ることができる。

集計の仕方も年々改善されていて、最新の2022年調査では従業地位のカテゴリーとして「フリーランス」が設けられている。このような働き方をする人が増えているためだ。従業地位と年収のクロス統計表を見ると、フリーランスの稼ぎは少ない。かといって、労働時間が短いわけではない。フリーランスの場合、仕事の時間に際限がなくなりがちだ。


 

時間給にすると、さぞ悲惨なデータが出てくるだろう。元の資料を見ると、「年間就業日数×週間就業時間×年収」の3重クロス表がある。これによると、フリーランスで最も多いのは「年間就業日数200~249日(225日)、週間就業時間40~44時間(42.5時間)、年収300~399万円(350万円)」の人たちだ。

カッコ内の階級値を使うと、1日の就業時間は週のそれを5で割って8.5時間。年間の就業時間は8.5時間×225日=1912.5時間となる。よって時間給は、350万円/1912.5時間=1830円と算出される。

他のセルについても同じやり方で時間給を出し、全てのセルを埋めた時給表を作る。それを参照し、各セルに入っている労働者の数を時給の度数分布表に割り振った。やや簡略化したやり方だが、この方法で正規職員3261万人、非正規職員1049万人、フリーランス115万人の時給分布を明らかにした<表1>。

newsweekjp_20240327012552.png

3つのグループで分布がかなり違っている。非正規とフリーランスは低い層のボリュームが多く、時給1000円未満の割合は正規が10.5%であるのに対し、非正規は41.6%、フリーランスは38.8%だ。

フリーランスは、500円未満の階層が18.8%と最も多くなっている。ほぼ5人に1人が、超悲惨な働き方をしているのが分かる。仕事時間が際限なく長くなりがちな一方で、もらえる対価が少ないためだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-午後3時のドルは155円半ばで底堅い、円弱含

ビジネス

ホンダの今期、営業利益予想2.8%増 商品価値に見

ビジネス

オリンパス、発行済み株式の5.15%・1000億円

ビジネス

ホンダ、発行済み株式の3.7%・3000億円上限に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中