「中国の覇権主義と南シナ海」大胆かつ挑発的になる中国海軍と戦争勃発の日をインド戦略研究者が予想する
THE APPROACHING WAR
中国海警の艦船(2023年2月) CFOTO/Sipa USA via Reuters Connect
<中国の南シナ海における軍事的な行動はフィリピンやベトナムそして国際社会の最大の脅威に。中国の拡張主義を回避し抑え込む方法はあるのか?>
インド太平洋における領土・領海の現状を覆そうとする中国のひそかな活動は、既に10年以上に及んでいる。
そのせいで地域内のオーストラリアやインド、日本、台湾、東南アジア数カ国、さらにアメリカとの緊張は高まる一方だ。
アメリカが欧州や中東での戦争に視線と資源を注ぐなか、最近の中国は攻撃的な拡張主義を一層強めている。中国が地域覇権を握るシナリオが現実になる日は、かつてなく近い。
中国は台湾に対して、習近平(シー・チンピン)国家主席が掲げる「再統一」方針の下、手を替え品を替え圧迫を加えている。
戦争の暗雲はヒマラヤ山脈にも漂い、中国とインドが国境を争う一帯では4年近く前から、中国側の相次ぐ侵入が招いた軍事的膠着状態が続く。
東シナ海では、尖閣諸島の領有権を主張する中国が領海・領空侵犯を繰り返し、日本の軍備強化に拍車をかけている。
だが最大のリスクが潜むのは、中国の攻撃的な行動が、米軍の艦船や航空機などとの危険な「ニアミス」を頻繁に引き起こしている南シナ海だろう。
中国は長らく、この海域で支配的立場を固めようと試み、南シナ海の豊富な資源、および世界の海運の3分の1が通航する戦略的地理条件を利用すべく執拗な取り組みを続けてきた。
今や南シナ海では、中国の海軍や空軍が近隣国の排他的経済水域(EEZ)を定期的に巡回し、世界最大で最も重武装の沿岸警備隊である中国の海警総隊が、他国のオフショア油田・ガス田を勝手にパトロールしている。
巨大メガシップを含む海警総隊の艦船は、「非致死性」兵器の高圧放水砲や長距離音響装置をやみくもに使用する。
さらに、中国は海軍や海警総隊を派遣して船舶の尾行や追跡、嫌がらせを行っている。
アメリカ船籍の船のほか、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンやベトナムの船舶がその対象だ。漁船でさえも標的にされ、破壊されている。
南シナ海での中国の軍事化はフィリピンとベトナムにとって最大の脅威だ。
ベトナムは独自の外交政策を追求するが、フィリピンはアメリカの長年の同盟国で、1951年に相互防衛条約を締結した相手だ。
それにもかかわらず、南シナ海での中国の動きに関して、アメリカは主にフィリピンの自助努力に任せている。
2012年、フィリピンのEEZ内にあるスカボロー礁の実効支配に中国が乗り出した際、当時のオバマ米政権は沈黙したままだった。
それ以来、フィリピンのEEZのほかの区域でも中国による切り崩しが着実に進むが、アメリカはフィリピン支持を表明するだけだ。