最新記事

新型コロナウイルス

中国からの入国者をめぐる韓国の混乱......陰性証明書でも陽性に、陽性判定者は逃走

2023年1月18日(水)19時40分
佐々木和義

陽性判定を受けた中国人男性が逃走

陽性判定を受けた長期滞在者と韓国人は、重症でない限り7日間の自宅隔離が義務付けられる。韓国内に住所がない短期滞在者は空港近くの臨時施設で7日間隔離される。

1月3日夜、仁川空港で陽性判定を受けた40代の中国人男性が逃走した。専用バスで隔離先のホテルに到着直後、走り去ったという。警察が防犯カメラを確認して、隔離先のホテルから300メートルほど離れた大型スーパーまで移動したことを突き止めたが、その後の行方がわからなくなり、5日午後1時、ソウル市内のホテルで身柄を確保した。スーパーからタクシーでソウルに移動したようだ。

虚偽の住所、検査を受けない人も

長期滞在者と韓国人のPCR検査を担う自治体は悲鳴を上げている。1月2日から11日までの10日間に1万3007人が中国から入国した。そのうち2852人が空港や港湾で検査を受け、1万155人は居住地近くの保健所で検査を受けることになった。

中国人居住者が多いソウル市九老区は保健所の人員を増やし、京畿道安山市は市内2か所保健所で週末検査を再開した。入国者は24時間以内に検査を受けることが義務付けられるため、対象者が1人でもいる地域の保健所は対応しなければならないのだ。韓国語を話せない長期滞在者もいて、多者通話などを利用しているという。

検査を受けない人たちもいる。1月2日から4日に入国した3566人のうち、外国人20人と韓国人9人が検査を受けていないことが判明した。保健所は入国の際に届け出た連絡先に通知するが、虚偽の住所や連絡先を提出した疑いがある人もいるという。

仁川市中区庁は人手不足に陥っている。仁川空港で陽性判定を受けた短期在留者は隔離先ホテルがある同区の感染者に合算され、同区庁が管理する。

区庁は人手不足を補うため中央事故収拾本部に職員派遣を要請し、短期滞在者は韓国語が通じないことから通訳者を手配したが、隔離場所の移転を求める苦情電話が相次ぐなど、業務に支障が出ているという。

一方、米国とオーストラリアの航空路線再開を推進

少なくとも20カ国が対中国の水際対策を強化するなか、中国は日本と韓国の2カ国に報復措置を取る一方、米国とオーストラリアの航空路線再開を推進する。

韓国メディアは中国が米豪との関係改善を模索すると論じるが、中国にとって日本や韓国との往来は水際対策を緩和すれば短期間で元に戻るのに対し、米豪は時間がかかると予想される。そこで、各国を牽制するため日韓へのビザ発給を停止しながら米豪には真逆の対応を取っていると考えられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領代行にモフベル第1副大統領、5日間の服

ビジネス

四半世紀の緩和、大企業・製造業は為替影響の回答目立

ワールド

頼清徳氏、台湾新総統に就任 中国に威嚇中止を要求

ビジネス

アングル:海外短期筋が日本株買い転換の観測、個人の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中