最新記事

宇宙

「こうすれば飲める!」宇宙飛行士のコーヒー休憩...無重力環境の専用カップが存在した

2022年10月24日(月)19時30分
青葉やまと

宇宙でこのカップを使うとコーヒーを香りとともに味わうことができる......twitter-@AstroSamantha

<ミッションの合間のリラックスタイムにも、宇宙空間ならではのひと工夫が必要だ>

国際宇宙ステーション(ISS)での生活には、ちょっとした動作にも創意工夫が宿っているようだ。

欧州宇宙機関所属(ESA)のイタリア人宇宙飛行士であるサマンサ・クリストフォレッティさんが、ISSでのコーヒーの楽しみ方を動画で紹介している。彼女がTwitterに投稿した動画によると、専用のカップがなければコーヒーを嗜みづらいのだという。

動画のなかでクリストフォレッティさんは微笑みながら、パウチ容器に入った液体のコーヒーを持っている。ゼリー飲料のようなチューブ付きの容器となっているため、容器を握ればそのままチューブに口をつけて飲むこともできそうだ。

しかし、ここはやはりカップに移し、地上と同じようにコーヒーの香りを存分に楽しみたいところ。クリストフォレッティさんは「カップを使えるかな?」と思い立ち、「やってみよう!」とチャレンジする。

地上と同じようにやってみると......

彼女は小さなビンをカップとして使い、パウチ容器からゆっくりとコーヒーを移してゆく。飛び散ってしまうかと思いきや、カップのなかで塊となって張り付いている。

液体には表面張力が働いており、なるべく表面積が少ない形状、すなわち球状になろうとする性質がある。そのため慎重に注ぐ限り、四方に飛び散るようなことにはならないようだ。

ところがいざ飲もうとすると、この性質がかえって問題となってしまう。クリストフォレッティさんは地上の要領でカップに口をつけて傾けるが、コーヒーはカップの底にへばり付いたままだ。

重力がないためコーヒーが口元まで降りてきてくれず、加えて塊になろうとする性質が仇となってしまったようだ。カップを動かしてもコーヒーは内部であらぬ方向に移動するだけだ。「うーん......コーヒーが出てこない!」と困り顔のクリストフォレッティさん。

そこで彼女は、「スペースカップを使ってみよう!」とひらめく。カメラに映し出されたのは変わった形のカップで、レストランで出されるカレールーの器(グレイビーボート)のような形をしている。飲み口が円形ではなく、涙型のように細く絞られているのが特徴だ。

>>■■【動画】宇宙飛行士のコーヒー休憩はちょっと変わっていた...無重力環境の専用カップが存在■■

スペースカップで優雅なコーヒータイム

クリストフォレッティさんはカメラにスペースカップを見せながら、「特別な形をしていている」と説明する。「この(飲み口先端の尖った)角度のおかげで毛細管現象が起き、コーヒーがフチまで流れてくる」とのことだ。

先ほどと同じ要領でパウチからカップにコーヒーを注ぐと、毛細管現象で吸い上げられてフチ付近に適量が溜まる。溜まっているコーヒーに口をつけ、あとは軽く吸い込むだけだ。コーヒーが乾いた喉を潤すと、彼女は「できた!」と締めくくり、カメラに再び笑顔を見せた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは横ばい圏155円後半、実需の買い一

ビジネス

日経平均は反発、節目回復で上昇に弾み 先物主導で見

ビジネス

東京海上、政策株式を29年度末までにゼロに 今年度

ワールド

インドネシア経常赤字、第1四半期は対GDP比0.6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中