最新記事

自然

北欧の雪山に「5つの太陽」が出現...神秘的な現象「幻日」が撮影される

Very Rare Solar Halo and 'Sundogs' Filmed Over Mountain

2022年10月29日(土)19時38分
ジェス・トムソン
太陽の光

flyingv43-iStock

<大気中の氷の結晶によって太陽の光が屈折することで起きる気象現象「ハロ」と「幻日」を捉えた動画が、スウェーデンで撮影された>

スウェーデンの雪山の上空に、神秘的な光の輪「ハロ」が出現し、珍しいその現象を捉えた映像がソーシャルメディア上で話題になっている。

■【動画】太陽を囲む2つの輪と「偽の太陽」...スウェーデンで撮影された「幻日」の動画

Twitterのユーザー「TheFigen_」が10月24日に投稿した動画には、山頂にいるスキーヤーたちの目の前に、明るい光の輪が2つ浮かんでいる様子が映っている。一方の円がもう一方の円の中にあり、それぞれの円の上下左右には明るい光の点がある。

光の輪は「ハロ」あるいは「暈(かさ)」、明るい光の点は「幻日(げんじつ)」と呼ばれるもので、どちらも寒い環境でのみ見られる珍しい現象だ。大気中の氷の結晶で太陽の光が屈折することで現れる。虹や霧虹が、大小の水滴で光が屈折・拡散することによって発生するのと同じ仕組みだ。

屈折とは、光の波が氷や水などの別の媒質を通過した後、その速度が変化することによって光の方向が変わることだ。

モロッコのモハメッド6世工科大学で気候変動への適応を研究しているヴィクター・オンゴマ助教授は「これはハロだ。光の輪の見え方は、光の反射や屈折に関わる氷の結晶の形や質に左右される」とニューズウィークに語った。

光の輪は、太陽が見る人に対して22度の位置にあることから、「22度ハロ」とも呼ばれる。

「撮影されたハロは珍しいものだ。22度ハロが低い位置の太陽を取り囲み、その左右には幻日がある。上部にはタンジェントアーク(ハロに接している弧)、下部にはサンピラー(太陽柱)が見える。この現象、特に太陽を横切るアークは、六角柱状の結晶が大気中で水平方向に横たわっていることによるもので、その平面プリズムも水平に並んでいる必要がある」とオンゴマは説明する。

米国立気象局(NWS)によると、太陽から光の軸が伸びて見える「サンピラー」も空気中の氷の結晶を光が通過することで起こる珍しい現象で、巻雲が発生している時に見られることが多い。

アリストテレスも見た「2つの偽の太陽」

ハロは、明るい月明かりでも発生することがある。古くからハロは、天気が下り坂のサインとされてきた。

幻日も古代から確認され、人々を困惑させてきた。アリストテレスは『気象論』第3巻で、「2つの偽の太陽が太陽と共に上り、日没まで終日太陽の後を追っていた」と述べている。また、薔薇戦争中の1461年に英ヘレフォードシャーで起きたモーティマーズクロスの戦いの前には、「3つの太陽」を持つ光の輪が出現したと言われている。

中国では2020年初頭に、巨大なハロが空全体に現れ、四方には幻日が生じている様子が確認されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中