最新記事

英政治

英首相ジョンソン、続投決定も不信任4割にも 与党内の指導力に打撃

2022年6月7日(火)10時52分
英ジョンソン首相

英与党保守党は、党首であるジョンソン首相(写真)に対する信任投票を実施した。投票を監督した党委員会のグラハム・ブレイディ委員長によると信任が211票、不信任が148票となり、ジョンソン氏の続投が確定した。ロンドンで3日代表撮影(2022年 ロイター)

英与党保守党は6日、党首であるジョンソン首相に対する信任投票を実施した。投票を監督した党委員会のグラハム・ブレイディ委員長によると信任が211票、不信任が148票となり、ジョンソン氏の続投が確定した。

ただ、不信任票の割合は41%と大きく、ジョンソン氏の指導力にとって打撃となり、支持回復に苦戦を強いられるとみられる。

投票結果を受け、ポンドは6日の取引で上昇を維持した。ポンド/ドルは0.3%高の1.253ドル、ユーロ/ポンドは0.3%安の85.33ペンス。

ジョンソン氏が獲得した信任票の割合は59%。メイ前首相の2018年12月の信任投票での信任票の割合は63%と、今回のジョンソン氏を上回っていたが、7カ月後に退陣している。

ジョンソン氏が新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)中に首相官邸のパーティーに参加した「パーティーゲート」問題に関する報告書を受けて、与党内では首相退陣論が再燃していた。

ジョンソン氏は41%が不信任票を投じた今回の信任投票について、前進に向けた決定的な勝利だったと評価。記者団に対し「決定的な結果だった。これにより、政府は国民のために重要なことに集中できる」と述べた。

一部で指摘されている解散・総選挙については「関心がない」とし「国民のために直ちに行動を起こすことに関心を持っている」と語った。

複数の議員は今回の信任投票について、一時は揺るぎない地位を得ているように見えた首相にとって、予想以上に悪い結果だったと指摘する。

元閣僚のデビッド・ジョーンズ氏は、ロイターに対し「ジョンソン氏はこの投票に安心する一方、次の優先事項が党の結束を立て直すことだと理解するだろう」と語った。

また、党内のある議員は匿名を条件に「大方の人が予想していたよりも明らかに悪い(結果)」と指摘。その上で、今後何が起こるかについて語るのは時期尚早と述べた。

多くのアナリストは、この信任投票がパーティーゲートに区切りをつけ、英国本土から北アイルランドへの物品輸送に関する欧州連合(EU)離脱に伴う合意内容を破棄するというジョンソン氏の脅しを巡る不透明感が後退すれば、ポンドにとってプラスになる可能性があるとみていた。

信任投票は、最終的な党首交代に道を開く可能性もある。

BMOキャピタル・マーケッツの欧州FX戦略責任者、スティーブン・ギャロ氏は、保守党党首が交代すれば、2023年に再びスコットランド独立を巡る住民投票が実施される可能性が低下するほか、税や支出へのアプローチよりも公共投資の拡大が焦点になるだろうと述べた。

INGバンクのアナリストは、パーティーゲート問題が発覚した際にポンドは反応しておらず、指導者交代の見通しも政策的にはあまり影響がないかもしれないと指摘した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で...批判噴出


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ休戦合意に向けた取り組み、振り出しに戻る=ハマ

ビジネス

米金融政策は「引き締め的」、物価下押し圧力に=シカ

ビジネス

マクドナルド、米国内で5ドルのセットメニュー開始か

ビジネス

テスラ、急速充電ネットワーク拡大に5億ドル投資へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 9

    「一番マシ」な政党だったはずが...一党長期政権支配…

  • 10

    「妻の行動で国民に心配かけたことを謝罪」 韓国ユン…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中