最新記事

南シナ海

米国務省、南シナ海における中国の権益を否定(詳細)

U.S. Dismisses China's Claims in South China Sea in State Department Report

2022年1月14日(金)17時57分
ジョン・フェン

南シナ海の東を航行する米軍と自衛隊の軍艦(2020年7月、フィリピン海)  U.S. Navy/REUTERS

<中国側が独自に設定した九段線や直線基線に法的根拠はないとの見解を改めて強調>

米国務省は1月12日、南シナ海をめぐる中国の主張に関する全44ページの報告書を公表した。この中で、南シナ海の広い海域について管轄権があるとする中国の主張を、全面的に退けた。

中国は、南シナ海に記した「九段線」の範囲内にある全ての島について、「歴史的な権利」を有していると主張。海面下にあるものも含め、九段線の内側にある何百もの地物を取り囲む海域の管轄権を主張している。

米国務省の報告書「リミッツ・イン・ザ・シーズ No.150」は、中国による領有権の主張ではなく海洋権益に関する主張について、1982年に締結された国連海洋法条約(UNCLOS)に照らして評価を行った。アメリカは南シナ海の約250の島や岩礁、砂洲や堆の領有権については特定の立場を取っていないが、重要な複数の通商路(特に中国の制海権主張が国際法に反するものである海域)については、航行の自由を主張している。

同報告書では、管轄権争いがある4つの海域について調査を行った。中国は中国の領海からかけ離れたこれらの海域で、満潮時には水面下に沈んでしまう100以上の岩礁などについて、管轄権を主張している。国連海洋法条約(中国は1996年に批准)の下では、このような地物については有効な管轄権を主張することはできず、群島水域とすることはできないと定められている。

中国の身勝手な線引きに異議

中国は水面下にある地物について所有権を主張するだけでなく、地理的に全く別々の海域を恣意的につないで「直線基線」を引いており、エネルギー資源が豊富な海域にある複数の群島周辺の広い海域を、排他的水域に設定している。報告書は、プラタス諸島(東沙諸島)、パラセル諸島(西沙諸島)、スプラトリー諸島(南沙諸島)と中沙諸島の4つの群島の周囲に、こうした海域が設定されていると指摘した。

さらに中国は、それぞれの群島を一つの塊として扱い、内水、領海、排他的経済水域と大陸棚の権利を主張している。国連海洋法条約では、限られた条件(海岸線が著しく曲折しているか海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所)の下でのみ、直線基線を引くことができると定めており、中国の行為はこれに反する。

map1.png

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中