最新記事

奇病

早老症のユーチューバーが15歳で死去

Hutchinson-Gilford Progeria Syndrome Explained As YouTuber Adalia Rose Dies

2022年1月17日(月)17時43分
アリストス・ジョージャウ
ローズと同じハッチンソン・グリフォード・プロジェリア症候群を抱える少女

少女は加速度的に老化する珍しい遺伝疾患を抱えていた(イメージ) ktsimage-iStock.

<肉体の加齢が急速に進んでしまう200万人に1人というまれな遺伝子疾患の少女は、日々の生活や闘病生活の動画を投稿して300万人近い登録ユーザーの心に深い刻印を残した>

15歳のユーチューバー、アダリア・ローズ・ウィリアムズのチャンネルには、300万人近い登録ユーザーがいた。そんな彼女が1月12日、この世を去った。ローズはハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群という珍しい遺伝疾患を抱えていた。

ローズの家族はフェイスブックとインスタグラムに声明を投稿。死去した事実を明らかにするとともに「(ローズはついに)この世から解放」されたと述べた。

ローズはユーチューバーとして、自らの生活や闘病生活を記録した動画を公開していた。

声明で家族はこうも述べている。「彼女は静かにこの世にやってきて、静かに去っていった。だがその人生は静けさとはかけ離れたものだった。何百万の人々の心を動かし、彼女を知る全ての人に最大級の刻印を残していった。彼女はもはや苦しみの中になく、今は大好きな全ての音楽に合わせて踊っている。これが私たちの現実でなければと思うが、残念ながら現実だ」

「彼女を愛し、支援してくださった全ての人にありがとうを言いたい。長年、彼女の健康を守るために働いてくれた全ての医師と看護師の皆さん、ありがとう。家族は今、この大きな喪失を内々で悼みたいと望んでいます」

プロジェリアとはどんな病気か

ハッチンソン・グリフォード・プロジェリア症候群(プロジェリア症候群、早老症の一種)は、非常にまれな遺伝子疾患で、一言で言えば子供の体が急速に年老いていく病気だ。

生まれた時は健康に問題は見られないが、多くの場合は生後2年までの間に急速な生物学的老化の徴候が見られるようになるという。

クリーブランド・クリニックによると、発症するのは世界中で200万人に1人の割合で、男女の違いはない。

原因となるのはラミンA(LMNA)という遺伝子の変異だ。ラミンAは細胞核がばらばらにならないようまとめる作用を持つLMNAタンパク質を作り出す。

ところがこの遺伝子に変異が生じると、プロジェリンと呼ばれる異常な形のLMNAタンパク質が生成される。プロジェリンは細胞を不安定にし、その結果として急速な老化が起こる。

発症のリスクを高めるような要因(環境や生活習慣など)は見つかっていない。多くの遺伝子疾患とは異なり、家族間で遺伝することはない。メイヨー・クリニックによれば、第1子も第2子もプロジェリアという確率は約2〜3%だという。

この病気を持つ子供は、運動能力の発達や知性が正常なのに、肉体的な成長が著しく遅い。徴候や症状が現れるのはたいてい、1歳になる前だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国勢、ロンドン不動産投資が8年ぶり高水準 ドル高

ワールド

アングル:民間機に重大な影響及ぼすGPS妨害、世界

ワールド

台湾、次期総統就任後の中国軍事演習を警戒 治安当局

ワールド

中国、大気汚染改善目標が半数の都市で未達 経済優先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中