最新記事

ワクチン

ワクチン拒否者への「差別」は正当か? 肯定派・反対派の言い分

2021年10月1日(金)08時18分
ベンジャミン・ウィッテス(ブルッキングス研究所上級研究員)、リズ・ウィーラー(政治コメンテーター)

211005P44_WCN_04.jpg

SKAMAN306/GETTY IMAGES

ワクチン接種を強いる権利は誰にもない

リズ・ウィーラー(政治コメンテーター)

もしあなたが、ワクチン接種を受けていない人や受けたかどうかを明らかにしない人を排除するとしても、それはあなたの自由。ばかじゃないのと個人的には思うけれど、どうせ私の意見など誰も気にしない。それで構わないのだけど、もしも民間企業や州政府、あるいは公衆衛生当局や連邦政府が同じことをするなら、それは問題だ。

少しおかしくないだろうか。接種義務化を支持する人たちは、ワクチンが新型コロナウイルスに有効だと信じる一方で、接種していない人と接触したら自分も感染しかねないと心配している。これは矛盾している。

普通は2つに1つ。ワクチンがあれば新型コロナの感染爆発は終わる、ワクチンがあれば感染は止まる、ワクチンがあれば自分は安全──と信じるか。あるいは、いやワクチンなんて効かないし、接種しても自分がウイルスの運び屋になることはあり、せいぜい重症化して死ぬのを防げるだけだと信じるか。

なぜこのような混乱が生じたのか。感染症対策の司令塔である米疾病対策センター(CDC)のワクチンに関する情報発信が、とんでもなくお粗末だったからだ。

アメリカ国民は矛盾した話を聞かされている。大統領は国民に、ワクチン接種を受ければ新型コロナの感染は防げると言った。でも今の私たちは、こう聞かされている。接種しても感染することはあると。重症化はしないかもしれないが、感染の可能性はあり、誰かにウイルスをうつしてしまう可能性もあると。それでもまだ、CDCはこう言っている。この病気はワクチンを打っていない人の間で広がる疫病だと。

こうした矛盾のせいで、国民は政府機関への信頼を失い、いわゆる専門家に対する信頼を失った。私はそう思う。一人のアメリカ国民として言わせてもらえば、ワクチン接種を受けたい人は受ければいいし、受けたくない人は受けなければいい。自分の体のことを自分で決める権利、自分の体に異物を入れるか入れないかを選ぶ権利。それを私は尊重する。だから誰が接種を受けようと、私には関係ない。

誰にでも周囲の人たちにワクチンを接種したかどうかを尋ね、その証拠を見せるよう求める権利がある。しかし聞かれた側の人にも、回答を拒み、証拠を見せない権利がある。こういう権利関係は誰もが認めるところだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇

ワールド

ゴア元副大統領や女優ミシェル・ヨー氏ら受賞、米大統

ワールド

ハマス、カイロに代表団派遣 ガザ停戦巡り4日にCI

ワールド

フランスでもガザ反戦デモ拡大、警察が校舎占拠の学生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中