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話題作『ノマドランド』の原作者が見た「痛々しいほどの孤独」

2021年3月27日(土)15時20分
大橋 希(本誌記者)

――ノマドはアメリカで広がる格差の象徴だ。でも映画は、どこか希望を感じさせるような内容だった。

あなたのような意見は聞くし、反対に「暗くて悲観的だった」という声も聞く。そうした異なる意見が出るのはとてもいいことだと思う。私の本に関してもいろいろな感想があり、現代版「怒りの葡萄」(ジョン・スタインベック著)のようだと言う人もいれば、「私もああいうロードトリップに出たい」と言い、明るいものとして捉えた人もいる。

私は映画を見て、痛々しいほどの孤独を感じた。最後のほうではこの旅はまだ続く、苦労も続いていくと思ったし、それほど明るい作品とは思わなかった。

ある意味、(ノマド生活の)両面を見せており、観客それぞれの気持ちで変わってくるのではないか。

――クロエ・ジャオ監督やフランシス・マクドーマンドとはどんな話をした?

クロエとは韓国料理店で初めて会った。そのときは映画についてまだ決まっていないことが多く、私が本に書いたこと、書かなかったことについて情報を共有した。彼女はRTR(ノマドたちが砂漠で開く会合)に行ってみたといい、それについての話もいろいろと出た。

フランシスとは、私が1週間アリゾナの撮影現場を訪問したときに初めて話をした。

――何か印象的なことはあった?

彼女は疲れているようだった。役にすべてを捧げている感じだったし、砂漠の中だったから。でもとにかく素晴らしい人だったのは確か。

――リンダ・メイなど本に登場する実際のノマドたちも出演していて、ドキュメンター映画のようでもあった。リンダたちの出演はあなたの提案か。

クロエは以前の作品でも、演技の未経験者を起用している。だから、彼女から「リンダに映画に出てもらうのはどう?」と聞かれたとき、非常にいいアイデアだと私は答えた。最終的には監督・脚本家のクロエが決めたことで、リンダたちも素晴らしい仕事をしたと思う。

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