最新記事

性スキャンダル

タイガーが暴露症の女ばかり選んだ理由(アーカイブ記事)

2021年2月24日(水)15時39分
ローラ・キプニス

私たちはみんな、そうしたものを得るために自分たちの魅力と才能を駆使している。だがお色気を売るのは危うい選択だ。自分を他の誰かと取り替えのきく存在におとしめてしまうからだ。

10人以上の元愛人の写真を前に、自分が大勢の中の1人だったと気づくのは屈辱的なことに違いない。元愛人のうち2人は、クリントン元大統領のセクハラ裁判でポーラ・ジョーンズの代理人を務めた弁護士を雇い、ウッズに対して公の場で妻に謝罪したように自分たちにも謝罪するよう要求した。

ウッズに傷つけられた彼女たちは、その復讐をしようとした。もっとも彼女たちは、ベッドを共にした男についても、またセレブとの性的関係とはどういうものかについても、現実的な理解が抜け落ちていたようだ。

こうした出来事の裏には相互の誤解がある。フランスの心理分析学者ジャック・ラカンは愛についてこう語っている。「愛とは手元にない物を、それを欲しがってもいない人に与えることだ」

言い換えるなら愛とは誤った自己認識。私たちが愛しているのは自分たちを投影したものに過ぎない。

誰しも罪深い秘密を持っている

この「愛」を「セレブの世界」に置き換えても同じことが言える。セックスの相手をするファンも、関連商品を扱う企業もセレブが「自分たちの求めるとおりの存在」であることを期待する。

だが小さな球を長い棒でカップに打ち込む才能と誠実さや高潔さとの間には必ずしも相関関係がないことを知ったファンはショックを受けたり落胆したりする。

結局のところ妻も含め、誰もウッズのことを理解していなかった。そして妻は、結婚した相手が何者であるかまるで分かっていなかったことを世界に知らしめたくてピープル誌の表紙になった。

あらゆるスキャンダルは「表の顔」と本当にその人を突き動かしている「何か」の間のギャップを暴きだす。

ウッズの聖人君子的なイメージとグリーン外での火遊びとの間に横たわる大きな距離を思えば、スキャンダルになるのは時間の問題だった。もっと言えば、ウッズはスキャンダルに発展すること間違いなしの女性にばかり引きつけられていたようだ。

スキャンダルのニュースを見るたびに感じること。それは自分の敵は自分だということだ。罪深い秘密は出口を求めている。そして誰しもそんな秘密を持っている。

Slate.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米家計・銀行・企業の財務状況は概ね良好=クックFR

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中