最新記事

古代サメ

「巨大な古代サメ『メガロドン』は体長15メートル」との推定結果が示される

2020年10月7日(水)18時30分
松岡由希子

古代サメ「メガロドン」は、の体長は約15メートル(イメージ図) Warpaintcobra-iStock

<古代サメ「メガロドン」は、の体長は約15メートルと、近縁種と比べて異常に大きいことがわかった......>

およそ1500万年前から360万年前にかけて生息していた「メガロドン」は、ネズミザメ目に属する古代サメだ。現生種のサメと同様に、骨格が軟骨で形成されていたため、ほぼ歯しか残されておらず、その解剖学的構造はいまだ解明されていない。

しかしこのほど、メガロドンの体長は約15メートルと、近縁種と比べて異常に大きいことがわかった。

体長は少なくとも14メートルはある

米デポール大学の古生物学者島田賢舟教授らの研究チームは、ネズミザメ目に属する非プランクトン食の現生13種の標本をもとに、絶滅したネズミザメ目の非プランクトン食のサメの体、顎、歯列の長さを歯から推定することに成功した。

megalodon-sharksa.jpg

ネズミザメ目の最大サイズの分布を示す概略図。灰色は現代と黒色は絶滅。大きさの比較として、人間(赤)がある。Credit: Kenshu Shimada, DePaul University.


この研究成果は2020年10月5日、古生物学専門学術雑誌「ヒストリカル・バイオロジー」で発表されている。

これによると、メガロドンの体長は少なくとも14メートルと推定される。絶滅種も含め、他の非プランクトン食のサメの体長が概ね7メートルであることを鑑みると異常に大きく、むしろ、ジンベエザメやウバザメといったプランクトン食のサメに近い。また、中生代よりも新生代のほうが、ネズミザメ目でより大きい種の系統がみられることもわかった。

研究チームは、ネズミザメ目のサメが巨大化した原因として「母親の体内で孵化初期の胚を大きくするための『子宮内共食い』が考えられるのではないか」と考察している。

iStock-1159510119.jpg

メガロドンの歯とホオジロザメの歯との比較 Mark Kostich-iStock

RTX14V2P.JPG

ロシアで展示された復元モデル REUTERS/Alexander Demianchuk

メガロドンにまつわる謎はまだ多く残されている

メガロドンの大きさについては、英ブリストル大学の研究チームが2020年9月3日に「サイエンティフィック・リポーツ」で発表した研究論文で「頭部が最長4.65メートル、背びれが最長1.62メートルと推定される」ことも示されているが、現時点では、「どれくらいの大きさに達するのか」、「なぜ絶滅したのか」など、メガロドンにまつわる謎はまだ多く残されている。

島田教授らの研究成果は、メガロドンの巨大さを改めて示したのみならず、「なぜ、ネズミザメ目でメガロドン以外の非プランクトン食の種では体長が7メートル以内なのか」など、海洋生物の進化の解明に向けた新たな視点を提示している点で評価されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

独プーマ、第1四半期は売上高が予想と一致 年内の受

ビジネス

外貨準備高、4月末は1兆2789億ドル 「外貨証券

ワールド

米下院、ジョンソン議長の解任動議却下 共和党保守強

ビジネス

米マイクロソフト、ナイジェリアの開発センター閉鎖・
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中