最新記事

日本政治

山本太郎の胸のうち「少なくとも自分は、小池さんに一番迫れる候補」

More Than a Zero Chance of Winning

2020年6月30日(火)17時30分
森達也(作家、映画監督)

写真は昨年7月の参院選に立候補したときの山本太郎 Kim Kyung Hoon-REUTERS

<「空気を読まないにも程がある」と嘆かれても、あえて東京都知事選に立候補した山本太郎に作家・映画監督の森達也が聞いた>

以前から出馬するのでは、との噂はあった。でも先に宇都宮健児が出馬表明した。その段階で山本太郎の出馬はないだろうと僕は考えた。だってもしも立候補したら、宇都宮と明らかに票を食い合う。結果としては共倒れだ。ところが宇都宮から2週間以上遅れて、山本は出馬を宣言した。

「これ以上(国民が)頑張るって何なんだよ。頑張るべきは政治だろ、って話です」

これは多くのメディアが引用した出馬宣言の記者会見における山本の発言の一部。言っていることはもっともだけど、僕も含めて多くの人が、これで小池百合子続投はほぼ確定だと思ったはずだ。空気を読まないにも程がある。困惑しながら嘆く人は、僕の周囲でも少なくない。

ここで少しだけ自分自身について書く。これまでの選挙で自民党に入れたことはない。特に今の自民党(というか安倍政権)については、ほとんどの政策に同意できない。だから野党支持だ。もしもあなたが自民党支持者ならば、僕の視点は偏っていると見られるだろう。それは否定しない。でも偏りはあって当たり前。公正中立になど書けない。僕は山本を支持する一人だ。ただし熱狂はしていない。それを前提に置いて読んでほしい。

6月24日、新宿で街宣を終えて事務所に帰ってきたばかりの山本は、少し緊張した表情でZoomに接続したPCの画面に現れた。僕の最初の質問は街宣の手応えについて。れいわ新選組ブームに沸いた去年7月の参院選のときとは絶対に違うはずだ。

正直に言えば今回は厳しいです。そんな言葉を予想していたが、「去年より熱いです」と山本は即答した。何だそれ。負け惜しみだろうか。いやそんなことを口にするタイプではない。絶句する僕に山本は、「三密を避けるために今はほぼゲリラ街宣です。要するに予告なし」と言った。ならば困惑する支持層だけではなく、山本太郎やれいわに対してのアンチも相当数いるはずだ。

「その覚悟はしていた。でも熱いです。政治への関心が上がっているのだと思います」

「それはつまり......」

「コロナをきっかけに、今の政治に対しての不信や疑問が大きくなった。ならばこの男が何を言うのか聞いてみよう。そう考える人が増えてきた。そんな気がします」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ一時初の4万ドル台、利下げ観測が

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、4月輸入物価が約2年ぶりの

ビジネス

中国の生産能力と輸出、米での投資損なう可能性=米N

ワールド

G7、ロシア凍結資産活用巡るEUの方針支持へ 財務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中