コービーはジョーダンに並ぶ「神」だった
A Tribute to the Black Mamba
「コービーは私たちにとってのエルビス」
コービーは憧れのジョーダンの、さらに上をいこうとした。両者を指導したフィル・ジャクソン監督が互いを引き合わせたところ、コービーが開口一番こう言ったのは有名だ。「俺はあんたにワン・オン・ワン(1対1)で勝てるぜ」
やはり、好きになれない......。
しかし、最終目的地のロサンゼルスに到着すると、私は突き動かされるようにレイカーズの本拠地ステープルズ・センターに直行した。グラミー賞授賞式開催のため厳戒態勢が敷かれたアリーナ周辺を、スーツケースを転がしながら歩いた。
アリーナ近くの建物ではコービーの肖像がスクリーンに映され、多くの市民がその前に集まっていた。写真を見上げ、静かに物思いにふける人、祈りを捧げる人、「コービーのために優勝するぞ」と叫ぶ人。普段は陽気なロサンゼルスの街が、やり場のない悲しみで満ちあふれていた。
なぜ、そこまでファンに愛されたのか知りたかった。「彼はわれわれにとってのエルビス(・プレスリー)だった」とある40代のファンは言った。
その比較で腑に落ちた。42歳で亡くなったエルビスと、41歳だったコービー。新世代の音楽ロックを社会に広めた王様と、ジョーダン後のNBAを担ったマンバ(毒蛇になぞらえた愛称)。そう、コービーは「神」の存在を脅かしただけでなく、彼自身もまた神だったのだ。私も心の奥底では分かっていた。
ジョーダンのNBA制覇6度に対し、コービーは5度。歴代5位の3万2292点に対して同4位の3万3643点。そんな数字の比較に意味はない。いてもたってもいられずに夜の街に集まったファンの姿が、存在の大きさを何より物語っていた。
午前4時から練習するなど、コービーのバスケットボールに対するストイックな姿勢は伝説的だった。現役を退いた2016年、スポーツ選手を表彰するESPY賞で功績をたたえられた際も、受賞スピーチで不断の努力の重要性を説いた。「休むのは最後だ。途中ではない」
あまりにも早い最後だった。