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ペルー人質事件の再現『ベル・カント』は、原作のほうがずっと魅力的

Squandering a Fascinating Story

2019年11月15日(金)17時00分
マリッサ・マルティネリ

映画版は政治サスペンスなのか人間ドラマなのか全く別のジャンルなのか、よく分からない。俳優たちもオペラの歌詞のようなせりふに苦労し、裏にある熱情を伝え切れない。

予告編ではコスのピアノ伴奏者が射殺されるが、この人物は脇役中の脇役だ。原作ではインスリンの注射を忘れて死ぬのだが、なぜ展開を変えたのか理解に苦しむ。

映画の終盤では交渉人が、こんな状況は持続不能だと警告するが、みんなはコスの美声に聴き入るのみ。そして事態が陰惨な結末に向かうなか、次に何が来るかを理解しているのはゲンだけだ。

ゲンの目は観客の目だ。テロリストと人質との共存は「新たな常態」だとカルメンが言うと、ゲンは「永遠には続かない」と答える。映画が終わり、観客はその言葉が本当でよかった、と思うはずだ。

©2019 The Slate Group

<本誌2019年11月19日号掲載>

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