最新記事

不服従運動

温暖化に抵抗する新ムーブメント「絶滅への反逆」が世界で一斉デモ

Extinction Rebellion Groups Hold Worldwide Climate Change Protests

2019年10月10日(木)15時10分
ジェフリー・マーティン

「絶滅への反逆」デモに参加したドイツの団体。赤は犠牲になる血の色だという(ベルリン) REUTERS/Christian Mang

<体を張って大々的にアピールするが非暴力、という市民運動に世界が注目>

気候変動の危機を訴える「エクスティンクション・リベリオン(絶滅への反逆)」は2018年、幾つもの大規模な抗議デモを組織した市民運動だ。地球を表す円の中に、種の絶滅回避まで残り時間が少ないことを意味する砂時計を入れた絵をシンボルに掲げる彼らは、イギリスやアメリカ、オーストラリアをはじめとする72カ国に400を超えるグループがあるとしている。

この「絶滅への反逆(略称はXR)」とは何なのか。そして彼らの目標は何なのだろうか。

同運動のイギリス支部のウェブサイトはXRについて、「大量絶滅を阻止し、社会の崩壊リスクを最小限に抑えるために、非暴力の市民的不服従活動を展開する国際的な運動」と説明している。

彼らは抗議行動の中で、気候変動への対策を求めると同時に、多くの人権問題についても変革を要求している。

XRが初めて抗議デモを行ったのは2018年11月。場所はロンドンで、活動家たちがテムズ川に架かる主な5つの橋を占拠した。85人の活動家が逮捕された。

「大々的な」市民的不服従を奨励

彼らのイデオロギーは、ソーシャルメディアや各国での報道を通じて、あっという間に広まった。活動基盤の拡大とともにXRは2019年4月、「インターナショナル・リベリオン(国際的な反逆)」と銘打って各国で一斉に大規模デモを実施した。

ロンドンでは、ロンドンのピカデリー・サーカスやオックスフォード・サーカス、ウォータールー橋やマーブルアーチ、議会議事堂前の広場周辺を11日間にわたって占拠。テレグラフ紙によれば、1100人以上が逮捕されたという。

ニューヨークの地域情報サイト「パッチ」によれば、ニューヨーク市で展開されたデモでは活動家が街灯の柱によじ登って横断幕を振ったり、道路に寝そべって気候変動の緊急事態宣言を要求したりした。

人目を引くこうした大胆なアピールが、XRの特徴的な戦術だ。

XRイギリス支部のウェブサイトは、「我々は大規模かつ『大々的な』市民的不服従を奨励する」と述べている。「経済を混乱させて体制を揺るがしたり、妨害行為で耳目を集める活動を奨励する。これに伴う不便や迷惑については、心から謝罪する」

デモに参加して逮捕された91歳の男性(ロンドン)



赤ん坊に未来を、と訴えるデモ参加者たち(ロンドン)

<参考記事>「就活ばかり」日本の若者が世界に取り残される
<参考記事>日本の若者にとって気候変動よりも「セクシー」な問題とは
<参考記事>「気候変動が続くなら子どもは生まない」と抗議し始めた若者たち

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、宇宙偵察能力強化任務「予定通り遂行」と表明

ワールド

北朝鮮、「米が人権問題を政治利用」と非難

ワールド

ウクライナ総司令官、東部前線「状況悪化」 ロ軍攻勢

ビジネス

米GM、コロンビアとエクアドルで工場閉鎖 次世代車
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中