最新記事

寄生虫

ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいついで感染

2019年6月3日(月)18時30分
松丸さとみ

ナメクジを知らずに食べて感染? nilapictures-iStock

普段はネズミに寄生する住血線虫症

日本人も大好きな南の楽園ハワイで、旅行者が相次いで寄生虫に感染しているとして、ハワイ当局が注意喚起している。この感染症は、普段は自然に治癒するとされているが、昨年ではオーストラリアで死亡した例もある。

ハワイ州保健局は5月23日、「ハワイ島を訪れた旅行者が広東住血線虫症に感染した」と声明を発表した。今回感染が分かったのは3人で、全員が米国本土で暮らす成人だが、それぞれ感染経路も感染時期も異なるようだ。

広東住血線虫症とは、寄生性の線虫である広東住血線虫を原因とする感染症で、米ニュースサイト、アーズ・テクニカによると、普段はネズミの肺に生息しており、そこで卵を産む。ふ化した幼虫がネズミの体内を移動して喉まで来ると、ネズミはそれを咳とともに吐き出して飲み込む。

こうしてネズミが飲み込んだ広東住血線虫の幼虫は最終的にフンとして外に出るが、カタツムリやナメクジがそれを餌として食べ、ネズミがそのカタツムリやナメクジを餌として食べて広東住血線虫の幼虫が再びネズミの体内に入る。幼虫はネズミの脳で成虫したあと、肺へと移動して卵を産み、このサイクルが続いてく。

野菜についたナメクジを知らずに食べて感染も

ということで、上記のサイクルには人間の体に入るような部分はないのだが、広東住血線虫に感染しているナメクジやカタツムリなどを何かしらで食べてしまうと、感染する可能性がある。

「ナメクジなんて食べないから私は大丈夫」と思った人もいるかもしれないが、よく洗っていない野菜などにナメクジがついていたのに気づかずに食べてしまうケースもあるようだ。

今回ハワイ州保健局が発表した3人のうち2人は、当局が調査したところ感染源を特定できなかった。しかし1月に広東住血線虫症に感染した1人は、「手作りのサラダをたくさん食べた」と話しており、ここが感染源とみられている。この人物は入院せずに回復した。2月に感染した人は入院を要するほど体調を崩したが、やはり感染源を特定できなかった。しかし野菜やフルーツなどを摘んでそのまま食べたといい、これが原因だと考えられている。

ハワイ州保健局のウェブサイトは、カタツムリやナメクジを餌にする淡水エビ、陸生のカニ、カエルなども宿主になっている可能性があるため、生のままや火をよく通さずに食べると感染する可能性があるとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中