最新記事

日本社会

「どん兵衛・0円タクシー」のタダよりスゴい配車アプリ AIはタクシー業界の未来を握る?

2018年12月26日(水)19時35分
桃田 健史(ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

12月31日まで東京都内を走る「どん兵衛タクシー」。写真右が日清食品マーケティング部ブランドマネージャーの三井利宏氏(写真:筆者撮影)

12月5日から12月31日まで、東京都内を走る50台の「どん兵衛タクシー」。車体の全体や内装を日清食品による交通広告として使用する。

仕掛けたのは、ディー・エヌ・エー(DeNA)だ。

配車可能エリアは、渋谷区、新宿区、港区、中央区、千代田区付近で、行き先は東京23区全域。乗客の料金は、なんと無料である。

こうした無料のタクシーサービスは世界的に見ても極めて珍しい。また、期間限定とはいえ、国や地方自治体から補助を受けず、民間企業同士で連携する事業という点にもメディアの注目が集まっている。

これまでの交通広告では、電車の中吊りやバスの車内を対象とする場合が多く、電車1両やバス1台を広告でラッピングするケースを見かける機会も増えた。だが、そうした場合、広告主からの広告収入で乗車料金を無償化してはいない。あくまでも、空いたスペースを広告として販売するもので、交通事業者にとって広告収入は乗車料金に上乗せされるかたちとなる。

ところが、今回の事例では広告費用で乗車料金を賄おうというのだ。

そうなると、広告費用はかなり高いのではないかと考えるのは普通だろう。

だが、日清食品マーケティング部関係者は「一般的な交通広告と比べてけっして高い金額ではない」という。

いったい0円タクシーは、どのようなビジネスモデルなのか?

「タクベル」成功体験が生んだ「MOV」

nwj20181226193003.jpg

MOVに参画するタクシー事業者関係者。中央はディー・エヌ・エー執行役員の中島宏氏(写真:筆者撮影)

今回の0円タクシーが可能となった背景には、マッチングプラットフォーム「MOV(モブ)」がある。

タクシー事業者にとっては、契約スポンサーとMOVの双方から広告宣伝費を得られる。つまり、仮に乗車料金分が契約スポンサー収入とほぼ同じならば、MOVからの収入がタクシー事業者にとっての利益となる。さらに、新しい顧客層へのタクシー利用を促進することで顧客数が伸びる可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中