最新記事

米中関係

「キッシンジャー・習近平」会談の背後に次期米大統領候補

2018年11月12日(月)10時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2018年11月8日、訪中したキッシンジャー氏と握手する習近平国家主席 Thomas Peter-REUTERS

米大財閥トップによって占められる清華大学の顧問委員会を牛耳るキッシンジャー氏が動いた。北京で習近平と会ったが、その背後にはなんと、次期米大統領選出馬を狙うマイケル・ブルームバーグ氏(民主党)がいた。

北京で習近平と会談したキッシンジャー

アメリカの中間選挙の結果が出たあとの11月8日、キッシンジャー元米国務長官は、北京の人民大会堂で習近平国家主席と会談した。中国共産党新聞網(および『人民日報』のトップページ)や中国の中央テレビ局CCTVあるいは新華網などが大きく伝えた。

それらによれば、習近平は以下のように言っている。美辞麗句を省いて概要を記す。

――キッシンジャー博士は中国人民の老朋友だ。米中関係と全世界のために歴史的役割を果たした。しかし今全世界は百年に一度の大変局に差し掛かっており、国際社会は米中関係が安定化することを望んでいる。私とトランプ大統領はアルゼンチンで開催されるG20期間に会談することになっている。双方とも関心のある問題に関して深く意見を交換してもいい。

米中両国は相手の意図に関して正確な判断をしなければならない。最近、アメリカ国内では対中消極論(筆者注:対中否定論=対中強硬論)が増えている。中国はあくまでも平和的発展を通して、断固「衝突せず、対抗せず、相互を尊重し、ウィン-ウィンの協力関係を保つ」米中関係の道を歩もうとしている。アメリカも「中国が選択した道と、発展の権利と、合理的な権益を尊重すべき」で、互いが相手の方向に向かって歩み寄り、米中関係の健全で安定的な発展を守っていかなければならない。

これに対してキッシンジャーは以下のように回答している。

――米中関係が新しい段階に差し掛かったこの時期に、こうして再び訪中し、習近平国家主席とお会いできたことは非常に嬉しい。過去の何十年にもわたって私は何度も訪中しており(筆者注:80回以上)、この目で中国の発展を見てきた。目下の世界情勢の中で、米中が協力して世界の平和と繁栄に貢献することは、殊のほか重要だ。私は中国がそのために努力してきたことを高く評価する。米中関係は戦略的思考と先見の明が必要とされる。米中は意思疎通を盛んにして互いに理解し合い、共同の利益を求め、対立を緩和する方向に動かなければならない。共同の利益は、対立よりもはるかに重要であることに気が付かねばならないのである。トランプ大統領と習近平国家主席のアルゼンチンG20における会談が成功することを希望している。

どの部分を切り取ったかにもよるが、両者の発言からは概ね以下のことが読み取れる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中