最新記事

映画

新作『スター・ウォーズ』は最新デジタル技術よりフィルム実写を選んだ

2018年1月23日(火)13時19分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

コダック社のツイッターも『最後のジェダイ』についてIMAXフィルム撮影されたことを紹介している
 

さて、冒頭にも書いたように『最後のジェダイ』では、一部このIMAXカメラで撮影が行われている。前作『フォースの覚醒』でも10分間の映像がIMAXカメラで撮影されたことがファンの間で話題になった。

ここで上映にあたって問題になってくるのが上映時の画角比率である。実はIMAXデジタルで上映する場合、IMAXカメラで撮影された映像は映画館のスクリーンでは上下が切られて上映されてしまうのである。IMAXが1.43:1という独特な比率を持つと冒頭で書いたが、IMAXデジタルは1.94:1と、 IMAXカメラで撮影した映像と比べるとかなりワイドなイメージになってしまう。

残念ながら、現在日本でIMAXを導入しているほとんどの映画館はこの1.94:1比率のIMAXデジタルで、IMAX本来の映像は上下が切られてしまうが、大阪の109シネマズ大阪エキスポシティでは、本来のIMAX比率1.43:1でのIMAXデジタルレーザーと呼ばれる上映を行っている。上下がトリミングされた映像でなく、本来の画角で隅々まで見たいスター・ウォーズのファンは、わざわざ大阪まで足を運んだり、なかには海外のIMAX映画館まで見に行った強者もいるという。


本来のIMAX比率1.43:1の画角を体験できる109シネマズ大阪エキスポシティのIMAXスクリーン設置の様子。 109シネマズ チャンネル / YouTube


デジタルvs.フィルムの闘い

スチルカメラの世界でデジタル化が進んだのと同様に、映画の世界も2000年代に入り、デジタル撮影が多くなった。スターウォーズシリーズも『エピソード1/ファントムメナス』でデジタル化が導入され、『エピソード2/クローンの攻撃』は全編デジタルで撮影された。

当時の映画業界の様子について俳優のキアヌ・リーブスが『サイド バイ サイド フィルムからデジタルシネマへ(原題:Side by Side)』(2002年)というドキュメンタリー映画を制作している。デジタル化が進む映画界にスポットを当てた作品は、70名以上の映画監督、撮影監督を含む映画関係者たちが、映画のデジタル化に関するインタビューを収録しており、さまざまな意見を見ることができる。

世界の映画館の90%以上がデジタル化され、撮影に関してコストも時間もかかるフィルムよりデジタル撮影が主流となっている。そのため、映画撮影用のフィルムを作っているのもイーストマンコダック1社しかない状況だ。そんな中、あえてフィルムにこだわるのはなぜなのか。それは多くの監督たちがフィルムで映画を撮ることにこそ価値があると考えているからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、イスラエルへの兵器輸送一部停止か ハマスとの戦

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中