最新記事

ビットコイン

1億ドルのビットコインを間違って捨てた男 世界では300億ドル分が紛失

2017年12月1日(金)15時30分
アンソニー・カスバートソン

どこに埋もれているのか Bodnarchuk-iStock.

<ビットコイン価格が遂に1万ドルを超えるのを、複雑な心境で見守るイギリス人男性がいた。4年前に1億ドル相当のビットコインをハードディスクごと捨ててしまったのだ>

仮想通貨「ビットコイン」の価格が11月29日、初めて1コイン1万ドルを突破した。市場関係者の多くは、ビットコイン発展の一里塚として祝賀ムードだった。しかしウェールズ在住のジェームズ・ハウエルズ(32)にとって、ビットコインブームはまったく別の意味を持っていた。

ハウエルズは4年前、7500ビットコイン(当時の価格で約400万ドル)が入ったコンピューターのハードディスクをうっかり捨ててしまい、一躍時の人になった。最近のビットコイン価格の急騰で、ハウエルズが失くしたハードディスクの価値は、1億800万ドルに膨らんだ(他の仮想通貨も含む)。

ハードディスクは、今もハウエルズが暮らすニューポート近郊のゴミ処理場のゴミの山の中に埋もれている。

「ビットコインの価格はいつも気にかけている」とITスペシャリストのハウエルズは本誌に語った。「価値が上がるのはわかっていた。個人的には、ビットコインはまだまだ上がると思う。失くしたハードドライブも10億ドル以上になるだろう」

ハウエルズは2009年2月にデルのラップトップパソコンで取引が始まったばかりのビットコインを「マイニング(採掘)」した(新規のビットコインを台帳にあたる「ブロックチェーン」に登録すること)。翌年、パソコンを分解してハードディスクを引き出しにしまっておいた。それを、掃除のときに誤ってゴミ処理場に捨ててしまったのだ。

webt171201-bit02.jpg
まだ「採掘」を諦めていないハウエルズ James Howells

ランボルギーニが欲しい

今ハードディスクの上には4年分のゴミが積み重なっている。掘り起こして見つけるのは費用も時間もかかる大変な作業だ。何度も市議会に申請したが、失くした宝物を探す許可は下りていない。

「市議会と環境当局の両方を説得しなければならない」と、ハウエルズは言う。「私の計算ではまだまだ価値は上がる。無視できないほど高価なものになれば、どこかの時点で当局も許可を出さざるをえなくなるはずだ」

ハウエルズのようなビットコイン紛失は実は珍しくない。業界分析サイトによると、ビットコインの最初の取引が行われた2009年以降、世界で約278万コインのビットコインが紛失している。現在の価格だと300億ドル近くに相当する。

もし失くしたハードディスクを取り戻したら、ハウエルズはその金で仮想通貨のベンチャーを立ち上げ、不動産やランボルギーニを購入したいという。発掘を許可してくれた当局にも「多額の謝礼」を渡すつもりだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送米、民間人保護計画ないラファ侵攻支持できず 国

ビジネス

米財務省、中長期債の四半期入札規模を当面据え置き

ビジネス

FRB、バランスシート縮小ペース減速へ 国債月間最

ビジネス

クアルコム、4─6月業績見通しが予想超え スマホ市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中