最新記事

医療技術

PET検査を活用したアルツハイマー病への新たなアプローチ

2017年7月25日(火)20時30分
松岡由希子

「IDEAS STUDY」では、これまでに、65歳から95歳までの3,979人を対象に、PETによる「βアミロイド」の画像検査を実施し、検査前と検査から90日後における医学的管理の変化を検証した。これら被験者のうち64.4%が軽度認知症で、35.6%は認知症の基準と合致。また、検査前には、認識機能障害の主な原因として、アルツハイマー病が疑われていた。

PETによる検査では、軽度認知症患者の54.3%、認知症患者の70.5%が「βアミロイド」の陽性と判明。この検査結果をふまえ、軽度認知症患者の67.8%、認知症患者の65.9%において、薬物療法やカウンセリングなど、医学的管理に何らかの変更がなされたという。

アルツハイマー病への新たなアプローチ

この中間成果は、PETによる「βアミロイド」の画像検査が、アルツハイマー病の治療に少なからず影響を及ぼしうることを示すものといえよう。

「IDEAS STUDY」の主席研究者でもある米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジル・ラビノビッチ博士は「当初の仮説では、PETによる「βアミロイド」の画像検査により、30%程度の症例において医学的管理が変化するだろうと考えていた。しかし、今回の中間成果では、仮説と同等もしくはそれを上回る影響をもたらしうるとの結果が出た。」と評価している。

認知症を患う人は増加傾向にあり、国際アルツハイマー病協会(ADI)によると、世界全体で、認知症の人は、2015年時点の4,680万人から2030年までに7,500万人を超え、2050年には1億3,150万人に達するとみられている。とりわけ、様々な原因が複雑に作用して発症するアルツハイマー病は、その全貌がまだ解明されていないのが現状だ。「IDEAS STUDY」は、PETという最先端の画像診断技術を活用し、アルツハイマー病への新たなアプローチに挑戦している点で、注目に値するだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中